軽自動車の概念を塗り替えた革新的なモデル
いまや軽自動車の定番となった「ハイトワゴン」。その流れを決定づけたのが、1993年に登場した初代スズキ「ワゴンR」です。背の高いボディと使い勝手を最優先した設計は、当時の軽自動車の常識を大きく変えました。今回は発表直前の取材でおきた意外なエピソードや、初代ならではの工夫に注目しながら、ワゴンRがなぜ“革命的な存在”と呼ばれたのかをカタログとともに振り返ります。
初対面は大型台風の真っ只中だった
初代ワゴンRがスズキから登場したのは1993年9月のことだ。車名の由来は「ワゴンもあ〜る」「ワゴンであ〜る」から来たなどと、まことしやかに(!?)言われ、そんなエピソードを発表会でスピーチに立った当時の鈴木修会長(故人)も話していたような気もする(記憶にあまり自信はないが……)。自工会発行の「自動車ガイドブック・vol.40」を見ると、ワゴンRのページの欄外下に“ワゴンRの「R」は「Revolutionaly(画期的な)」と「Relaxation(くつろぎ)」の頭文字「R」で、「軽自動車の新しい流れをつくる新カテゴリーの車」、「生活にゆとり感を与える車」という2つの意味をこめている”とあり、これが正式見解というわけだ。
それにしても初代ワゴンRの登場はまさに画期的だった。これは今までにもどこかで何度か書いてきたのだが、ワゴンRの発表直前にメディア向けに事前撮影会が神奈川県横浜市のスズキの施設であり、筆者も某媒体のスタッフとともにその場に参加した。が、何しろ当日(発表前の8月だった)のことは忘れもしない。大型台風が折りしも首都圏直撃という最中でも撮影会自体は予定どおり敢行されたものの、参加者が出入りする施設建物のエントランスの自動ドアが開くたび盛大な雨と風が吹き込むわ、エントランスの床は水に濡れ足を取られそうになるわ、外から戻ってきたスタッフのビニール傘はひしゃげているわ……と、かなり過酷な状況だったことは、今でも鮮明に覚えている。「まさしく嵐を呼ぶクルマだなぁ」と、インパクトは絶大だった。
ハイトワゴン革命を起こした背の高さとパッケージング
ところで初代ワゴンRの実車の第一印象は“じつに独創的なクルマ”だった。一瞬、往年のホンダ「ステップバン」が頭を過ったのは事実だ。けれど1680mm(4WD車は1695mm、ルーフレールなしでも1640mm)と当時の他のスズキ車(アルトで1385〜1410mm、セルボ・モードで1370〜1410mmなど)と較べ圧倒的な背の高さは、後にハイトワゴンのカテゴリーを作るまでになったことはご承知のとおりだ。
もちろんパッケージングの秀逸さは、ワゴンRの最大の価値だった。高さ方向の数値は前席フロア高が315mm、同・座面高が625mm、天井までが1420mm(以上、FF車)で、アルトなどの乗用車タイプに較べ、立った姿勢からサッとオシリを乗せてシートに座れ、着座すると見晴らしのいいアイポイントになっていて、足を乗せたフロアは低く安定感がある……そんなワゴンRならではのポジションは快適そのものだ。運転席をややボディのセンター側に寄せてドア側とのゆとりを持たせたドライバー側のシートポジションも、コンパクトながら窮屈感を感じさせない工夫だった。


















































