画期的だったユーティリティ機能
機能的な室内設計にも目を見張った。一番の売りはダブルフォールディングリアシートだ。これは後席の背もたれを前倒しすれば、連動して座面が前方に移動しつつ沈み込み、最終的に低くフラットなラゲッジスペースが作り出せるというものだ。簡単な操作でできるところがよかった。リアシートはその後リクライニング機構が追加されるなどしている。
それと助手席座面を前方にハネ上げると出現するシートアンダーボックスも便利だった装備のひとつだ。約16Lの容量をもち、後に“バケツ”と呼ばれながら、他のスズキ車にも展開され定番となった装備だ。インパネは今見てもシンプルで美しいとさえ思えるデザインで、ポケット類も豊富に用意されていた。ただカップホルダーがまだなかったのは(後にシフトレバー前方に用意された)、時代を感じさせる事実というべきか。
バリエーション拡大と5ドア追加で人気が加速
一方でバリエーションの拡充も図られた。1993年11月に追加された“ワゴンRロフト”はそのひとつだ。生活雑貨を扱うLoFtとのタイアップで生まれたこのモデルは、ボディサイドストライプテープ、専用シート表皮などを装備し、“都市生活車”を謳い、いわば生活スタイルこだわり派向けにリリースされたモデルだった。また1995年2月にはインタークーラーターボが登場した。そのほかにコラムシフトとフロントベンチシートを組み合わせたワゴンRコラム、エアロパーツを装備したエアロRSコラムターボなども登場した。また’96年4月には、右側にもドアをプラスした5ドアが登場し、ワゴンR人気をさらに加速させた。
30年を経ても色褪せないシンプルで機能的な佇まい
いま改めてカタログで眺めても初代ワゴンRのシンプルでクッキリとした佇まいは決して古さを感じさせない。黒い樹脂色のバンパーをアクセントとし、低い位置から開くバックドア(ボタン開閉式、電気式ロックも採用され、運転席から解錠/施錠もできた)は見るからに機能的だったし、「さてこのクルマをどう使おう!?」と夢が膨らませてくれるものだった。軽自動車という概念にとらわれず、輸入車の横に並べてもヒケをとらない、日常的にスマートに乗りこなせるコンパクトで機能的、かつチャーミングなクルマだった。








































