3桁コードはスクープ記者に見破られ漏洩防ぐため「X」コード誕生! X1/9は乗用車開発9番目のクルマ
製品番号がそのまま車名として使われた最初の例は、1966年に登場した「124」である。このクルマはヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。その後もフィアットは製品番号をそのまま車名として使う手法を10年以上継続したが、その手法がメディアに知れ渡ってしまった。新製品や試作車の詳細を狙う雑誌のスクープ記者が、製品コードに含まれる数字のひとつでも見つけると、フィアットの意図を推測し、新車出現の予想も容易に推察できる由々しき事態となったのである。
しかも技術部門のこの秘密を、メディアだけではなくマーケティング部門が知るに及び、ジアコーザはある別の手法を生み出す。それが将来のプロジェクトを「X」で表すというものであった。アイデア自体は斬新ではなかったが、その出元は1954年からフィアットのライセンス生産を行っていたユーゴスラビアのザスタバ工場のゼネラルマネージャー、プロヴスラフ・ラコヴィッチだったと、ジアコーザは1979年に出版された自伝のなかで認めている。
ジアコーザは、新しいエンジンプロジェクトを「X0」、新しい乗用車プロジェクトを「X1」、新しいトラックを「X2」と呼ぶようにした。プロジェクト「X1/1」は最終的にフィアット 128へと結実し、アウトビアンキ「A112」が「X1/2」、フィアット「130」が「X1/3」、「127」が「X1/4」といった具合であった。ちなみに、ダンテ・ジアコーザが最後に担当したクルマが、この127である。
その後もX〇〇を3桁の数字に置き換えて車名にする手法はしばらくの間続いたそうだが、いつまで使われたのか、正式な資料はフィアットに残されていないそうだ。この事実を掘り当てたマッテオ・リカータは
「イタリア人は物を作るのは得意だが、管理するのは苦手なので、フィアットの歴史資料館でXコードに関する問い合わせに、明確な答えが得られなかったのも当然だった」
と語っている。いずれにせよ、Xコードの乗用車9番目のプロジェクトが「X1/9」であり、製品開発Xコードを使用するようになった以降で、開発コードがそのまま車名になった例は、前述したとおりこのクルマをおいて他にはない。
前オーナーの莫大な愛情とお金を注いだクルマを次の誰かが美味しく紡ぐクラシックカー市場の悲哀
さて、今回オークションに登場したモデルは1988年式のベルトーネX1/9である。ブラックの外装色に、マルチカラーのファブリックとグレーのレザー&クロスシート、ブラックのトリムという内外装を持ち、オークションカタログ作成時点での走行距離計は2万4331マイルであった。
この車両は過去数年間、イギリス(英国)のイングランド南東部ケント州に拠点を置く専門業者「メイドストーン・スポーツカーズ」によって整備がなされていた。2022年3月付の請求書では、エンジン整備、サスペンションブッシュ交換、ブレーキパッドとディスクの交換、その他ブレーキ関連作業および諸費用として、合計5224ポンド(約110万2264円)が記載されている。
さらに2025年9月および11月には、キャブレターの交換、チョークの自動式から手動式への変更、燃料タンクの洗浄と燃料ポンプおよびフィルターの交換を含む追加作業が行われ、2912ポンド(約61万4432円)が追加された。
総額で8136ポンド(約171万6696円)もの整備費用をかけたにもかかわらず、売却金額は6750ポンド(約142万4250円)なのだから、購入したユーザーはお得感満載なのかもしれない。前オーナーの苦労と出費を想像すると少し切なくなるが、「誰かが莫大な愛情(とお金)を注いだクルマを、次の誰かが美味しくいただく」。これこそが、クラシックカー趣味に潜む、残酷でありながらも最高に魅力的な“醍醐味”なのだ。
※為替レートは1ポンド=211円(2026年4月3日時点)で換算
























































































