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水も薬品も使わずに-79℃で汚れを剥がす。320万円のプロ向けドライアイス洗浄機

投稿日:

TEXT: AMW編集部  PHOTO: insieme

長年積み重なった汚れを“白い霧”が剥がしていく

工場のシャッターが開くと、そこにはレストア途中の旧車が静かにたたずんでいる。長年の走行で焼き付いたオイルや泥汚れに対し、水や薬品を使わずアプローチする技術が「ドライアイス洗浄」である。近年はディーゼル車の煤除去など自動車整備の現場でも存在感を高めている。そんな中、ドイツのDry Ice Energyが開発した最上位モデル「Champ Turbo Pro」が日本国内で発売された。

水も薬品も使わずに汚れを落とす仕組み

ドライアイス洗浄は、約3mmのドライアイスペレットを圧縮空気で高速噴射し、付着した汚れを除去する洗浄方法だ。

汚れが落ちる理由はひとつではない。高速で衝突する衝撃に加え、約マイナス79℃という低温によって汚れが急激に収縮し、細かな亀裂が生じる。そしてドライアイスが気体へ昇華する際の体積膨張が汚れを浮き上がらせる。この3つの作用が組み合わさることで、焼き付いたオイルやカーボン、長年蓄積した頑固な汚れを効率よく除去できるとされている。

さらに、ドライアイスは洗浄後に気体となって消えるため、砂やガラスビーズなどを使うブラストのように研磨材が残りにくい点も特徴だ。

旧車だけではない ディーゼル車の煤汚れにも注目

ドライアイス洗浄というと旧車レストアを思い浮かべる人も多いが、近年は現行車の整備でも活躍の場が広がっている。とくに現代のクリーンディーゼル車は、排ガスを再循環させるEGRシステムや直噴エンジンの構造上、どうしてもインテークマニホールド(吸気系)やEGRバルブ周辺に強固なカーボンが堆積しやすい。これらを従来の溶剤で漬け置き洗浄するには長時間の分解作業が必要だが、ドライアイス洗浄を用いれば、対象の部品を完全分解せずとも効率的にカーボンを吹き飛ばすことができるのだ。

今回発売された「Champ Turbo Pro」は、こうした吸気系やエンジン部品のカーボン除去、ディーゼル車の煤洗浄、固着したオイル汚れなど、高い洗浄能力が求められる作業を想定して開発されている。

また、エンジンルームや足まわり、サスペンション部品、ミッションケースなど、複雑な形状でブラシが届きにくい箇所でも施工しやすいことから、整備工場やカーディテイリングショップでも導入が進んでいる。

製造業でも使われるプロ向け洗浄技術

ドライアイス洗浄は、自動車業界だけの技術ではない。以前から樹脂成形金型の洗浄や工場設備、産業機械のメンテナンスなど、製造業の現場でも利用されてきた。設備を分解せずに洗浄できるケースがあることや、水や薬品を大量に使用しない点などが評価され、幅広い分野へ活用が広がっている。

こうした背景もあり、自動車整備の現場でも「素材への負担をできるだけ抑えながら汚れを落とす技術」として注目度が高まっている。

最上位モデル「Champ Turbo Pro」が日本上陸

今回、日本総代理店を務める株式会社insiemeが国内販売を開始した「Champ Turbo Pro」は、Dry Ice Energyシリーズのフラッグシップモデルだ。

欧米では「The Beast(ビースト)」の愛称でも知られ、最大使用圧力1.4MPa、最大ドライアイス消費量70kg/h、最大圧縮空気消費量3500L/minという高い処理能力を備える。一般ユーザー向けというよりは、整備工場やカーディテイリングショップ、レストア専門店、さらには製造業など、プロフェッショナルの現場を想定したモデルとなっている。

ドライアイス洗浄が万能な洗浄方法ではない点に留意する

一方で、ドライアイス洗浄は決して万能(魔法)というわけではない。施工対象の素材や汚れの種類によって適した方法は異なり、すべての部品に同じように施工できるわけではないからだ。

足まわりの金属部品に見られるような頑固なダストや表面的な酸化汚れなどを、研磨材を残さずにスッキリ落とせるほどの高い洗浄力は本機の大きな強みだ。しかし経年劣化した古いプラスチックやゴムホース、細い電気配線などに高圧で無造作に吹き付けると、マイナス79℃の急激な温度変化や風圧によって部品を破損させてしまうリスクがある。

クルマには「強力に当てていい頑丈な金属部品」と「繊細に扱うべき樹脂・配線類」が混在している。だからこそ、今回登場した「Champ Turbo Pro」のように処理能力が高い強力な機材になればなるほど、対象物に応じた緻密な圧力調整、ノズルの選択など、施工者の確かな知識と経験が問われることになるのだ。

洗う技術も進化の時代へ

クルマのメンテナンスは、部品交換やケミカルだけでなく、「どう洗うか」という技術も進化を続けている。

長年眠っていた旧車を蘇らせるレストアから、日々酷使されるディーゼル車の煤汚れへの対応、さらには製造現場の設備メンテナンスまで。用途は異なるものの、「素材を傷めにくく、効率よく汚れを落とす」という考え方は共通している。

なお、今回発売された「Champ Turbo Pro(320万円)」はシリーズ最上位モデルだが、Dry Ice Energyではより導入しやすいラインアップも展開している。軽量・コンパクトな「Champ Neo(68万円)」、洗浄力とコストのバランスを重視した「Champ Basic(129万円)」、さらに高出力モデルの「Champ Turbo(169万円)」など、施工内容や事業規模に応じて選択できる点も特徴だ。

ドライアイス洗浄は、旧車レストアからディーゼル車のメンテナンス、さらには製造現場まで、その活躍の場を広げている。一方で、対象物や施工条件によって適否が異なり、すべての部品や汚れに万能な洗浄方法ではない。適切な知識と機器設定のもとで活用することで、その性能を最大限に引き出せる技術といえるだろう。

「洗う」こともまた、クルマを長く美しく維持するための重要なメンテナンスのひとつ。ドライアイス洗浄は、これからの整備・カーケア業界でさらに存在感を高めていきそうだ。

詳しくはこちら

Champ Turbo PRO (チャンプターボプロ)

寸法:57×39.5×48cm

重量:23.5kg

使用圧力:0.1-1.4MPa

ドライアイス消費量:15-70kg/h(調整可能)

圧縮空気消費量:800-3,500 l/min

価格:320万円(税込)

【お問い合わせ】

株式会社insieme

Dry Ice Energy ブランドサイト:https://dryiceenergy.jp/

製品販売サイト (arinomama):https://arinomama.co.jp/collections/dry-ice-energy

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  • 国内有数のカスタムカーイベント「大阪オートメッセ」から生まれた自動車情報メディア「AUTO MESSE WEB」の編集部です。『CARトップ』などの自動車専門誌を発行する交通タイムス社が運営し、現在は4人の編集者を中心に、カスタム&チューニングを軸に新車、旧車、パーツ、イベントなど幅広いジャンルを取材・編集。正確性と信頼性を大切に、クルマを楽しむための情報を毎日お届けしています。 X→https://x.com/AutoMesseWeb
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