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500馬力オーバーだとR32「スカイラインGT-R」のミッションがもたない! 「オートギャラリー横浜」の壊れないミッションのノウハウとは

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TEXT: 増田高志  PHOTO: GT-R Magazine

シンクロが作れるルートを開拓したことが転機となる

 主なメニューはIN/EX共に264度のカム、鍛造ピストン、インタークーラー、それにオイルクーラーはどれもHKS製で、アペックスのエアクリーナーとオリジナルのチタンマフラーを組み合わせる。エアフロはニスモ製でノーマルコンピュータを書き換えて制御した。インジェクターは550㏄でニスモタービンを1.5kg/cm2まで過給して530psを発揮。足まわりはHKSのハイパーマックスIIIで、ブレーキはAPレーシング製のフロント6ポッド+355φ、リヤは4ポッド+333φ。ホイールはアドバンレーシングRGの17インチ、タイヤはヨコハマ・アドバンA048の265/35R17だ。室内はダッシュボード貫通の9点式ロールケージで武装している。

 当時としてはごくオーソドックスな500psオーバーのエンジンメニューで耐久性を重視。そのぶん、足の仕様やアライメントにこだわって、サーキットでも音を上げずに楽しめるストリートマシンというコンセプトでまとめようとした。

 それなのにサーキットでの最初のテストランでいきなりトランスミッショントラブルが勃発。4速に入らない。3速から4速へのシフトアップはできるが、5速から4速へのシフトダウンができないのだ。エンジンやフットワークにはこだわったが、たしかにトランスミッションはノーマークだった。

 サーキットまで自走して行ったので、トランスミッションに気を配って帰途につく。すると一般道では不具合が起こらない。念のためにオーバーホールして再度、サーキットに出向いた。しかし症状が出るまで、多少時間が伸びるものの、最終的には同じ不具合が出てしまう。

「500psぐらいにパワーアップするとトラブルが出始めるんです。街中でそこそこ飛ばすぶんには症状は出ないのですが、サーキットをハードに攻め込むと顕著に発生します」

 当時、トランスミッションの新品は13万円で手に入った。オーバーホールの費用は7〜8万円。いずれにせよ、対策を考えないとトランスミッションばかりにお金が掛かってしまう。

「4速のシンクロの強度不足が不具合を引き起こしていました。純正はより力の掛かる2速と3速はダブルコーンシンクロになっているのですが、それ以外はシングルなんです」

 原因はすぐに突き止めたが打開策が見つからない。グループAで使われているようなドグタイプなら頑丈だろうが、街中では大袈裟過ぎるし、高価になってしまう。小泉代表はドグクラッチではなく、扱いやすいシンクロメッシュのHパターンにこだわりたかった。

 なんとかシンクロが作れるルートを開拓して、強化品の製作に取り組んだ。最初に4つの試作品が出来上がった。早速デモカーのR32で試してみる。すると、すこぶる具合がいい。その話を聞きつけた常連が自分のRにも施してほしいと言ってきた。結局、残りの3つもそれぞれほかのGT-Rに装着することになった。

シンクロのイメージ

 しかし、その3台のうち2台がノーマルと同じ不具合を発生させた。分解するとわずかなクリアランスの影響だった。コンマ1mmレベルの違いが悪さをする。「精度を上げて作り直してもらいました。製品化を考えていたのでトラブルの排除を徹底したかったんです」

 しかし、小泉代表が納得するレベルには至らなかった。部品ばかりでなく組み付け方やケースの公差までが不具合に関係してくるからだ。やればやるほど弊害が顔を出す。

「デモカーにパーツを組み付けては不具合を確かめました。加工して微調整したり組み付けを工夫したり、1日にトランスミッションを3回載せ換えるなんてザラでした。上手くいかず頭にきて、トランスミッションを工場の外にぶん投げたことも3回ありました」

苦難を乗り越えGT-Rユーザーから支持されるトランスミッションが完成

 一度は断念したが頭を冷やして再度取り組んだ。こうした執念、努力が実を結び、なんとかカタチになった。それが『スーパーシフトミッション690』だ。

「当初はダブルコーンで強化したシンクロを単体パーツとして発売しようとしましたが、組み付けにノウハウが必要なので完成品のトランスミッションとして出荷することにしたんです」

 現在までに約700基を販売して、オーバーホールに戻ってきたのが10基ほどである。他も元気に活躍しているはずだ。

「サーキットを楽しむために着手したR32で、まさかトランスミッションの開発に明け暮れるとは思ってもいませんでした。でもそれで良いトランスミッションが完成しました。これはもう心に残る一台に間違いありません」

 ここ4〜5年はトランスミッションの仕事が80%を占めているという。どこからか噂を聞きつけて、全国の名だたるGT-Rのプロショップが使ってくれている。小泉代表にとってこのR32は、そんな名誉を得るために共に戦った同志のような存在なのだ。

(この記事は2019年4月1日発売のGT-R Magazine 146号に掲載した記事を元に再編集しています)

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