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「ミウラ」とのたった15分のランデヴー。フェラーリにはなかった瞬発力を当時のランボルギーニはたしかに持っていた【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁/Automobili Lamborghini S.p.A.

後にも先にもランボルギーニではミウラほど興奮するクルマはなかった

その人は大阪の上客さんで色々なクルマを買ってくれたから、信用貸しでクルマを預けた。どれくらいたったかはわからないがそのお客さんから連絡があって、クルマが止まってしまったので取りに来てほしい由。そこで僕の出番となった。半分はミウラに乗れるという高揚感。そして半分はどんなトラブルを抱えているかという不安だったが、乗りたい方が勝っていた。

止まっていたのはかつての東横線渋谷駅のガード下を出たところ。国道246号線上である。そのお客さんによればオーバーヒートしたのでクルマを止めたそうで、あとは乗って行ってくれという御達し。早速エンジンをかけると、水温は適温に戻っていたのでそのまま走りだした。

しかし、快適なのは僅か数分。信号で1回とまったらすでに水温は100度を超えていた。仕方なく大坂上(現在の道玄坂上)でクルマを止めてリアカウルを開ける。すると、何とリザーバータンクの下から水が漏れているではないか! 要するにラジエターの水がかなり漏洩したようだ。水を補給するしかない。

そこで、目の前にあった中将湯で有名だった津村順天堂(今の株式会社バスクリン)で水を分けてくれるように頼んだ。当時は非常に珍しいクルマだったこともあって、社員の人たちも出てきた。ヤカンで水を入れるのだが果たしてどの程度入ることやら。漏れを放置してそのまま会社までたどり着くやら不安が大きかったが、もう走るしかない。

驚くほどの瞬発力を持つフェラーリは当時存在しなかった

だから、飛ばしに飛ばした。渋谷から等々力のショールームまで、空いていれば当時は15分程度で行きつく。そのくらいなら持つだろうという勘定だった。もう時効だから話すが、法定速度をかなり超過していたと思う。当時の246はさほど混んでおらず、いまでは考えられないほど空いていた時代の話だ。信号で止まった時、ふと横を見ると、ミニスカートのお嬢さんが立っていて、そのスカートから上が見えなかった。それほどミウラの着座位置が低かったのである。

1速で全開にするとメーターは90km/h近くまで伸びたと記憶する。恐ろしく速いと思った。フェラーリにも散々乗ったが、その瞬発力を持つフェラーリは当時存在しなかった。明らかにランボルギーニの方が速かったと思う。まあ、よくぞ事故も起こさず、無事にショールームまで辿りついたと思うが、確かきっちり15分ほどだった。これがミウラの初ドライブだった。ただ、すげぇ! それだけである。それにしてもリザーバータンクの小ささには参った。ショールームについた時、水温計はほぼ130度に達していた。内圧が上がるので100度を超えてもこのあたりまでは大丈夫というのが定説だった。あと少し距離が長かったらアウトだった。

* * *

残念ながらその後ミウラを触る機会はなく、モータージャーナリストになった後もただ眺めるだけで、実際に乗る機会はなかった。僕が乗った素のミウラは走行距離にして数千キロのモデル。新車とは言わないが、限りなく新車に近いモデルである。ランボルギーニにはこれ以外にも多くのモデルに乗ったが、ミウラほど興奮するモデルはなかった。

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