いざ、蔵王エコーラインへ
至福のコーヒーとドライブを味わうために向かうのは「日本百名山」。今回はジープ「グランドチェロキー4xe」でエコーラインのワインディングを楽しみ、標高1841mの蔵王山で一杯の「山の珈琲」を嗜んできました。
きわだつコクピットのぬくもり
白石ICからエコーラインを目指して、ゆるやかな登り坂を駆け上がっていく。梅雨入りしたとあって、休日であるにもかかわらずクルマの往来は少ない。あらかじめドライブモードはバッテリーの充電レベルを維持する「e-SAVEモード」へと切り替えておいた。それでも272ps/400Nmの1995cc直列4気筒ターボエンジンは、軽快に車重2685kgのグランドチェロキー4xeの位置エネルギーを大きくしていく。
森林限界を越えると一気に視界が開けてくる──はずなのだが、あいにく標高が高くなるのに比例して白い靄が立ち込めてきた。緑の樹々が一転、山水画の世界に迷い込んだようだ。
色彩が一切消失したモノトーンの世界にあって、グランドチェロキー4xeのコクピットは、唯一豊かな色彩を見せた。彩りが派手というわけではない。ドライバーを包むように広がるオープンボアフィニッシュの本木目のトリムがやさしく目に映るのだ。それは、ステアリングホイールの6時の位置にも同じ素材が用いられていて、テクスチュアとしても指で触れた感触が心地よい。プラスチックの無機質な感じが一切しない室内は、温もりさえも感じられるほどに心に寄り添ってくれる。それがこの日のような天気の場合はなおさらだ。
蔵王は、「鳥海や岩手のような独立孤高の姿勢がない。群雄並立といった感じで、その群雄を圧してそびえ立つ盟主がない」と、深田久弥の『日本百名山』に記されている。そこで蔵王と呼ぶ時には一連の山脈の総称となるのだが、この長大な尾根が深田の言葉を借りると「ドッシリと根を張っている」。鋭く天を刺すようなピークはなく、なだらかな山の背が麓に暮らす人々をおおらかに包み込んでいたのだろう。蔵王は厳しい修験の場というよりはむしろ、見る者に安心を与える信仰の対象であったのではないだろうか。
グランドチェロキー4xeのコクピットは、緩やかな曲線がドライバーとパッセンジャーを包み込むような印象だが、蔵王の連なる尾根はまさしく通じるものがある。さらに付け加えるならば、モーターが加わることでパワーとトルクの出方も、蔵王連山の稜線に近しいなだらかな曲線を描いているようだ。
ご近所だけでなく、自然にもやさしく
静寂のなか、ドライブモードを「ELECTRICモード」に切り替え、モーターのみで山頂付近の駐車場を目指す。早朝に自宅ガレージからクルマを出す際に、モーターだと静かなので近隣に迷惑をかけずに済む。しかし、こうした自然のなかを走る際には、サウンド以上に排気ガスを出さないことの方がむしろ大切である。生活道路ではなく、自然の一部を切り崩して造られた観光道路ならばなおさらだ。
グランドチェロキー4xeは、満充電で最大53km(WLTCモード)のEV走行ができる。ドライブモードはなるべくバッテリーを使わないようにここまで「e−SAVEモード」で走ってきたが、「ELECTRICモード」に切り替える。ガソリン残量は半分以上あるので、安心してEV走行だけでどこまで蔵王を登頂できるのかチャレンジである。モーターはP1とP2の2基。P1はスタータージェネレーターで、P2がEV走行ならびに「HYBRIDモード」の際に駆動アシストを受け持つ145ps/255Nmのモーターである。バッテリー残量に注視しながらアクセルペダルをコントロールし、ワインディングを駆け上がるのも、また楽しい。