最高出力は660馬力
カーボンモノコックを車体構造の核とすることはF50と変わらないが、F50がそれにV型12気筒エンジンをリジッドマウント(剛結)していたのとは対照的に、フェラーリ エンツォではサブフレームがモノコックに接続され、その上にさらなる軽量化が可能になったV型12気筒エンジンが搭載されるようになった。
ティーポ140B型と呼ばれるこのV型12気筒エンジンは、65度のバンク角を持つ6L仕様で、前に触れた軽量化はF50のようにエンジン自体が走行中の応力を担う構造材としての役割を担う必要がなくなったこと。それによってアルミニウム素材のエンジンブロックを採用できるようになったことが理由としては大きい。
ボア×ストローク値は92.0mm×75.2mmとF50と同様にショートストローク型。吸排気の両側に連続可変バルブタイミング機構を備えるほか、吸気系の通路切り替え(吸気管長切り替え)による可変慣性過給システム、独立型コイルを組み合わせるプラグを頭頂配置するなど、さまざまな新技術が導入されていたのも話題だった。
誰もがまずはスペック表の中で視線を落とした最高出力は660ps。組み合わせるトランスミッションは6速F1マチックが採用されたのも、カスタマーには歓迎すべき点だったはずだ。
フェラーリはパリ・サロンでの発表時点で、フェラーリ エンツォの生産台数を400台としていたが、購入を希望するカスタマーの声があまりにも大きかったためか、最終的には498台が生産されることになった。
走行距離は4300キロと少ない
今回RMサザビーズのモントレー・オークションに出品されたモデルは2003年11月に生産されたもので、ロッソ・コルサのボディカラーに、ペッレ・ロッサのインテリアカラーという、赤を基調とした華やかなフィニッシュを見せるもの。
2004年3月にドバイのディーラーを通じてドバイ在住のカスタマーに新車で販売されるが、その数カ月後にはアメリカのユタ州にわたり、2000年代後半になると所有者はカリフォルニア州に住む人物に代わった。
現在のオーナーは2009年2月にエンツォを購入して以来、2020年にはフェラーリ・クラシケの認定を取得したほか、定期的に整備のためにディーラーへと入庫。現在の走行距離は2687マイル(約4300km)を刻むのみだが、直近の整備は300マイル以内に行われていたという。
参考までにオリジナルのオーナーズマニュアルや、垂涎の的であるフェラーリ・クラシケのレッドブック、さらには工具やタイヤの空気入れ等々、すべてのアイテムが付属したこのエンツォの落札価格は407万5000ドル(邦貨換算約5億9090万円)。その人気はいまだに衰えを知らない。