各部の装備が興味深い
最初にご紹介する1台は1960年式の救急車。担架や機材を乗せるためにボディ後半が拡大され、水平なルーフが採用されるなどの特徴を持つ。改装はトリノの工房「カロッツェリア・コリアスコ・アウトヴェイコリ・インストゥリアーリ」が手がけた。この個体は1961年にデリバリーされ、長らくイタリア国内の飛行場で使用された後、スイスの自動車蒐集家ダニエル・イゼリ氏が2013年に購入、その後入念なレストアが行われている。
そしてもう1台のムルティプラはタクシーだ。かつてイタリアのタクシーといえば、その多くがムルティプラであった。
こちらは1964年にデリバリーされたそんなムルティプラのタクシーを、2007年から2009年にかけて、総額5万スイスフラン(810万円)以上をかけてレストアしたもの。ブラックとグリーンの2トーンカラーは当時イタリア各地の都市で見られた典型的な塗り分けで、料金メーター、照明付きルーフサイン(いわゆる行燈)、ルーフラックなどタクシーならではの装備も興味深い。さらにルーフラックには当時の旅行カバンなども付属。この個体の履歴を証明する書類各種も残されている。こちらのムルティプラ・タクシーもダニエル・イゼリ氏の「イゼリ・コレクション」から出展された1台。
オークションの結果、救急車は8万500スイスフラン(邦貨換算約1304万1000円)、タクシーは10万3500スイスフラン(邦貨換算約1676万7000円)でそれぞれ落札された。決して安い買い物ではないが、これは当時のイタリアの空気を現代に甦らせる「タイムマシーン」としての意義も含めた落札価格ということであろう。


















































































