映画出演歴もあるグリフォGL
イゾ グリフォGLでは、のちにシボレー390(5.8L)や427ビッグブロックV8を搭載した「7 Litri(セッテリトリ)」も追加されるが、今回の「ARIZONA 2024」オークション出品車は、生産台数では330台に達し、一連のグリフォのなかでは多数派を占めるとされているシリーズ1の1台である。
シェヴィ「Hi-Po」スペックの327V8エンジンに「ボルグ・ワーナー」社製4速マニュアルトランスミッション、ファイナルギヤ比3.07:1のリアアクスルの組み合わせ。純正エアコンディショナーやZF製クイックレシオ・ステアリングを選択し、1967年3月21日の完成後、イタリア国内の初代オーナーに引き渡されたとされている。
イゾ グリフォに関する登録資料によると、この個体は1973年に公開されたイタリアのクリミナルサスペンス映画「Milano Trema/La Polizia Vuole Giustizia(英語版タイトル:The Violent Professionals)」の主要シーンで印象的に登場したクルマそのもので、2000年から2013年にかけてオランダで登録されていたことも判明している。
そして、2017年にニューヨーク在住のスチュワート・パー氏が入手したのち、オリジナルのドライブトレーンをリビルドし、オリジナルのカラーリバリーを継承した内外装のレストアを敢行。さらに2021年に、現オーナーの手にわたることになったという。
このグリフォGLには前述の装備のほか、パワーステアリングやパワーブレーキ、運転席側のサイドミラーが装備されている。インテリアは、ブラックレザーでトリミングされたバケットシートとコンソール、木目調のダッシュボードにイタリアンGTの定番である「ヴェリア・ボレッティ」社製メーター、時計とAMラジオを備え、フルサイズのスペアタイヤがトランクに収納されている。
また現在のオーナーは、さらなるメカニカルパートの整備に約2万4000ドルを投資したと伝えられている。
イゾ グリフォGLはイタリア製グラントゥリズモの伝統と、アメリカンV8の逞しいパワー、キャリア最初期のジウジアーロの傑作と称される官能的なデザイン、そして素晴らしいパフォーマンスを兼ね備えた、隠れた傑作車といえる。また、整備やメンテナンスが容易なアメリカ製パワートレインという、実用的な魅力も加わっている。
RMサザビーズ北米本社の作成した公式オークションWEBカタログでは、「この時代のもっとも美しく、力強く、使い勝手の良いスーパースポーツのひとつ」と謳いつつ、30万ドル~37万5000ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。
そして実際の競売では、ぶじエスティメートに届く32万4000ドル。つまり日本円に換算すれば、約4800万円で落札されることになった。この落札価格は、現在のグリフォGLとしては標準的か、やや安価ともいえる。
それでも1980-90年代に日本国内の中古車ショップで、この10分の1以下のプライスボードをつけても長期在庫としてくすぶっていた時代を思えば、まさしく隔世の感と思われるのだ。