コンディション抜群の同車は現在も販売中
2023年12月8日、RMサザビーズがアメリカ・ニューヨークで開催したオークションにおいてメルセデス・ベンツ「500SEC AMG6.0」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
この時代のAMG車は、今でもその人気は一切衰えていない
1967年、当時のダイムラー・ベンツから独立したハンス・ヴェルナー・アウフレヒト(A)と、エアハルト・メルヒャー(M)によって、アウフレヒトの故郷であるグローザスバッハ(G)の地に設立されたAMG。
現在ではメルセデス・ベンツ・グループの子会社として、メルセデスAMGの名を掲げて究極のパフォーマンスを追求するブランドとして独自の活動を続けるに至っており、GTやSLなど、メルセデスAMGのブランドを車名として掲げる独自のモデルが誕生しているのも最近の話題である。
ここで紹介するのは、AMGがまだAMGとして独立したチューニング・メーカーだった時代のモデル、1986年式のメルセデス・ベンツ「500 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」だ。
1986年という年は、AMGにとっては歴史的にきわめて重要な節目となった。モータースポーツの世界においては事実上のワークス・チームとして、またメルセデス・ベンツを代表するエンジン・サプライヤーとしての活動を秘密裏に開始。
一方ロードカーのチューニングでは、メルセデス・ベンツのM117型V型8気筒エンジンに対応するDOHC32バルブヘッドを独自に開発することに成功しているのだ。AMGの創始者のひとりであるエルハルト・メルヒャーの手によるこの砂型鋳造によるアルミニウム製ヘッドは、ノーマルエンジンの性能を実質的に倍増させ、最大排気量とされた6Lユニットとの組み合わせでは、じつに375psを超える最高出力を得ることができたのである。
ちなみにそれに「ザ・ハンマー」のニックネームを与えたのは、Road&Track誌であったとされる。AMGはその設立からすでに、20年近くにわたって魅力的なパワー、ハンドリング、エアロダイナミクス、豪華なインテリア、注目を集めるエクステリアデザイン等々をカスタマーに提供してきたが、ハンマー・バージョンへのコンバートがもたらしたさらに卓越したパフォーマンスと、非常識ともいえるコストは、AMGをドイツの過熱するチューニングシーンの頂点に押し上げた。そしてこの時代のAMG車は、今でもその人気は一切衰えていないのだ。