フェラーリで製作された本物の風洞実験用モデル
このモデルはサーキット走行専用車の「FXX K」の正常進化型、「FXX K EVO」の開発に使用されたもの。
ちなみにFXX Kはその車名からも想像できるように、2005年に発表されたFXXの実質的な後継車にあたるモデルで、車名の最後に付されるKの文字は、フェラーリでは「HY-KERS」と呼ばれる運動エネルギー回生システムが搭載されていることを示している。
ミッドに搭載されるエンジンは「ラ フェラーリ」の6262cc版V型12気筒をベースに860psの最高出力と720Nmの最大トルクを発揮するものだが、これにHY-KERSによるエクストラが加わり、システム全体では1050ps、900Nmという数字をスペックシートには掲げていた。
ここからさらなる正常進化を遂げたFXX K EVOは、2017年に発表されたモデルだが、その特徴はおもにエアロダイナミクスの改善にあり、まさにフェラーリの風洞実験装置がさらなるパフォーマンスをカスタマーに提供した実例になる。
なおこのEVOモデルへのバージョンアップは、FXX Kへの交換パーツの取り付けのほか、最初からFXX K EVOとして生産されたものも若干数も存在しているという。
パリ・オークションに姿を現したこのスケールモデルは、実車の1/2サイズで製作されたもので、もちろんフェラーリで製作された本物の風洞実験用モデルである。開発の最終段階で製作された3台目のモデルということもあり、そのディテールはFXX K EVOのそれにほぼ等しい。参考までにEVOではフロントエンドの変更や、大型のリアウイング、アンダーボディ、ディフューザーなどの改良によってダウンフォースは23%増という結果を残している。
1100mm×2600mmのベースプレート上に置かれたブラックのスケールモデル。RMサザビーズが提示した28万~32万ユーロ(邦貨換算約4480万円~5120万円)という予想落札価格を目にした時には、さすがに驚きを隠せなかったが、そこはやはり世界中にスーパーリッチなコレクターが多く存在するのがフェラーリの世界。じつにその2倍以上となる66万ユーロ(同1億560万円)という価格で、落札された。まさに驚異のリザルトである。