今後の値動きにも注目
一方でよりストイックな走りを追求するために、軽量化もさらに徹底されている。スタンダードなNSXでは標準装備となるオーディオやエアコン、トラクションコントロール、スペアタイヤ、電気系統の一部までもが装備リストからは削除され、代わりにレカロ製のカスタムレーシングシートとエンケイの軽量鍛造アルミニウム製ホイールが装備された。遮音材もその多くは廃止され、バンパーやドアビームもアルミ化といった具合に、軽量化策を積み重ねた結果、タイプRの車重は1230kgにまで低減することが可能になったのである。
シャシーを強化するため、フロント・バッテリー・トレイの下と、フロント・ラジエターの前方にアルミ製のブラケットを追加。サーキットでの高速コーナリングからの急激なオーバーステアを防ぐため、フロントのスタビライザー、サスペンション・ブッシュ、コイルスプリング、ダンパーなどが専用部品に改められている。サスペンションのセッティングもタイプR独自のものだ。
この究極のNSXともいえるタイプRは、実質的には約3年間にわたって生産が継続されるが、2002年にはその直接の後継車となる「NSX-R」が誕生。それによってこの出品車は新たにNA1型と呼ばれるようになったものの、リトラクタブル形式のヘッドランプを持つスタイルや、わずかに483台という生産台数、しかも、すべて日本市場で販売されたという事実を考えれば、今後コレクターから高い人気を集めることは間違いない。
ちなみにこの個体は、新車からの走行距離が1万8500kmという素晴らしいコンディションを持つもの。RMサザビーズでは45万~55万ドル(邦貨換算約6705万円~8195万円)のエスティメート(予想落札価格)を掲げたが、残念ながらオークションでは落札に至らず、現在でも45万ドル(邦貨換算約6705万円)で応談という条件のまま販売が継続されている。
これから続々と世界のオークション・シーンに現れるだろう日本のスポーツカー。その値動きには注目しておきたい。