電子制御カップリングの駆動力制御で素早いレスポンス
次に、道幅が狭く勾配が変化するツイスティな低速ワインディングで、一部に未舗装で土が露出した部分を通過するといったコースを走った。ここでは、約50kgほど増しているという車重の影響、車重増加とパワー向上に合わせたサスペンション領域のチューニング、従来の油圧式から多板クラッチによる電子制御カップリングと組み合わされることになったAWD機構による前後トラクション制御の在り方、さらに私の中では、パワーコントロールユニットがエンジン上部に載せられたことによる重心への影響はどうなのか、などを知りたいところだった。
車重増加に関していえば、動力性能ではモーターとパワーの余力が完全に上回り、軽い登り勾配路でも従来のe-BOXERとの差は歴然だったが、とくにコーナー立ち上がりなどでのアクセルの踏み込みに対するレスポンスで大きく上回る。登りタイトコーナーでは、前内輪側は一瞬空転モードに入りそうになっても、瞬時に後ろから押し出されロスがない。なるほど、電子制御カップリングの駆動力制御の素早いレスポンスが垣間見える。
ステアリングの手応えが少し重めになったと感じるのは、前輪接地荷重が増えたせいなのか、ステアリング制御の見直しによるものなのか、ロアアームブッシュの強化によるものなのか、要因までは知れなかったが、若干のアンダーステア感の増加は、もしかするとフロントまわりの重心高の影響があったのかもしれない。ここは発売後に確認したい点だ。
低ミューのオフロードでも意図した通りに走れる
最後は草地における走行だったが、試乗日は前日の豪雨の後で、かつそれまでの走行により土が掘り返されて、泥濘とまではいかないが、水を多く含んだ土による轍路となっていた。冬場はゲレンデになるのだろう草地をここまで荒らしてしまって文句は言われないのだろうか、と余計な心配までするくらいだったが、まずはスバルAWD車の強みであるたっぷりとした最低地上高は従来通り200mm確保されていることもあり、柔らかい土や草とはいえ床下が着くような状況になるのが稀なのは心強く、不安感なく攻めていける。
さらに言うと、スバルが強調している前側方視界がピラーで遮られる死角が小さいことは、運転席から路面状況を見て的確に通るコースを選ぶ際にも強みであることを実感する。
こういう駆動抵抗が大きく、それでいてミューの低い路面では、まず絶対的に高い駆動力が求められるが、ともすると曲がりにくくなるという問題が発生する。電子制御カップリングの強みはここにあり、適時、前後駆動力配分を制御しているのだろう。アクセルオンのタイミングさえ見誤らなければ、意図しないアンダーステアなどに見舞われることなく、目標ラインをトレースしつつ旋回加速していくようなことも難しくなかった。
クロストレックの最上級グレードとして正式発売は間近
スバルの乗用車タイプのAWDは、もともと走破性でも優れていたが、今回の短い走行の中で知る限り、扱いやすさも増したかも、と思える。モデルライフの中での途中追加ということもあってか、リア側フロア形状の変更などによる荷室容積への多少の影響も見受けられるが、「走りにも安全性にも定評あるし、これで燃費さえ良ければ」といった声が払拭できるとなれば、あとはお値段次第か。
クロストレックは9月に行われた小改良における、2022年の発売時の価格に対しての価格の違いを代表的モデルでみると、装備の充実が図られたスタンダードモデルたる「ツーリング」のFWDで266万2000円(消費税込)から301万4000円(消費税込)へ、上級モデルの「リミテッド」のAWDで328万8900円(消費税込)から344万8500円(消費税込)へと価格は上がっている。それでも、近年の資材、生産、物流など全ての急激なコスト上昇を考慮すれば、抑えられているほうに思える。
これらに対して、S:HEVは、リミテッドより上級のモデルとして2グレードが用意されており、「プレミアムS:HEV」と「プレミアムS:HEV EX」で、いずれもAWDのみとなる。正式発表は12月前半と予想しているが、10月17日よりすでに先行予約を開始しており、リミテッドのAWDに対して35万円高、クロストレックにはこれまで設定のなかったアイサイトXの装着仕様で55万円高という話で、つまり最上級グレードでギリギリ400万円を切るといったところのようだ。走りも燃費も本来の実力が知れるのは発売されてからではあるが、楽しみに待つ甲斐は十分にありそうだ。






















































