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プジョー新型「3008」の日本ローンチの準備は整った! 若いころ「206」や「306」に乗っていた人に超オススメです【AMW編集長コラム】

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TEXT: 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)  PHOTO: AMW 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)/ステランティス

プジョーはこれから日本市場にどうアプローチするのか

プジョーがこれから向かうベクトルがわかったところで、実際の日本での販売戦略についてはどうなのだろうか。

日本におけるプジョーは、どちらかといえばエンスーなクルマ好きが選んでいたメーカーというイメージもある。また一方で身の回りのデザインにもこだわる、自分のスタイルを持っている人が積極的に選ぶメーカーだったかもしれない。デザイナーやアパレル関係といったファッション感度の高い人種が乗っているというイメージもある。

プジョーでは、カスタマーが「いま、なぜ、プジョーを買うのか」という理由に、デザインをあげている。先述したように、同じようなクルマばかりのなか、とくにデザイン上での差別化を図っているのがプジョーだ。エクステリアでは、たとえば夜見るとすぐにプジョーだと分かるライトシグネチャーなどで、きちんと個性が出るようにしている。インテリアではi-Cockpitは非常にユニークで、インテリアデザインを重要視するという日本のカスタマーにもおおいに受け入れられている。

世界147カ国で販売されているプジョーをグローバルな視点で見たとき、たとえば欧州ではステランティスグループ内での販売の3台に1台はプジョーなのだそうだ。この成功の理由は、EVのラインアップを非常に多彩な車種(12モデル)で展開している点にある。特に欧州ではBセグメント──208、2008が販売の筆頭で、EVのバンも欧州でもっとも売れているという背景がある。2024年には5つの新しいCセグメントのEVを出したことも大きく貢献しているようだ。

では、その欧州での成功をそのまま日本でトレースするのかといえば、そうではない。プジョーはグローバルブランドではあるが、ブランドとしての全体を作るものの、一つ一つの市場、日本市場にとっての最善を深く考えて、導入するモデルを吟味するとのこと。

たとえば、欧州での成功の鍵の一つとなっている電動化戦略であるが、欧州と同じラインアップ展開をしても失敗することは、すでに他の欧州ブランドが苦戦しているところを見ても明らかである。ノルウェーのように98%が電動化を達成しているような国ならともかく、BEVが日本でのメインストリームになるのはまだまだ時間がかかりそうだ。プジョーとしてもそこはよくわかっており、BEVを推し進めたいという思いはあれど、まずはもっとも人気のあるハイブリッドで展開していくとのことである。

新型3008が日本で売れるべくして生まれた1台

さて、ここでようやく実車を拝見させてもらったプジョー新型「3008」に話を収斂していこう。

日本市場におけるクルマが売れるキーは、デザインであるといった。3008はいま世界規模で流行っているSUVであるが、ファストバックSUVというこれまでにないカテゴリ──デザインのクルマだ。たとえばクロスオーバーSUVとも違う。真横から3008を見ると、ルーフからリアへとなだらかに傾斜するラインがスパッと切られたようなフォルムが斬新だ。コーダトロンカとでも言えばいいだろうか。初めて実車を眺めたとき、アルファ ロメオ「RZ」のサイドビューが最初に思い浮かんだ。しかし、3008はそれよりもちろん背が高い。たしかに何にも似ていないデザインであると言うことはできる。

それにフロントの3本のライトシグネチャーは、どう見てもプジョー。i-Cockpitを採用したインテリアに身を置くと、必要な機能がすべて手元にあり、特徴的なステアリングホイールや助手席側とはまったく見え方が異なってくるセンターコンソールのデザインなど、何にも似ていないデザインコンシャスな雰囲気。デザインを重視するという日本の目の肥えたカスタマーにも十分に納得してもらえるつくりである。

新型3008は「STLA Medium(ステラ・ミディアム)プラットフォーム」を使った最初のモデル。ステラ・ミディアム プラットフォームでは、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、BEVを作ることが可能となっているのが特徴だ。新型3008は欧州ではBEVがメインであるだろうが、日本ではハイブリッドを主力として販売する。これは先に述べたとおり、日本市場での最善を考えた結果である。

もちろん、新型3008の斬新なスタイルに惹かれてハイブリッドモデルを購入した新規顧客が、点検や整備などでディーラーショールームを訪れるようになり、プジョーのBEVの世界へと興味を持ってもらえるに越したことはない。まずは、ハイブリッドモデルで新たなカスタマーとのタッチポイントを作り出していくことが、いま日本におけるプジョーにとってもっとも大切で急務なことであろう。

【AMWノミカタ】

リンダ・ジャクソン プジョーCEO(取材当時)のプレゼンテーションで、プジョーが描いている日本市場での展開と新型3008をいかにしてセールスしていくかの道筋はわかった。順を追った理論は理路整然としていて、数多くの新型3008が日本の公道を走る姿をイメージすることはできた。

あとは、いかにローンチするか。プジョーを知らない新規カスタマーだけでなく、1990年代〜2000年代初頭にかけてプジョーが日本国内販売右肩上がりだった頃に、一度はプジョーを購入した人たちにいかに振り返ってもらうかが鍵となるだろう。当時20代〜30代でプジョーのオーナーになった人たちが、いまや40代〜50代というミドルエイジとなっている。新車で新型3008を購入するボリュームゾーンとなるはずだ。

内装のパネルが外れたり、日本車では考えられないトラブルに見舞われても、「やっぱ猫足だよね〜」と、笑ってプジョーを走らせる愉しさに一度は取り憑かれた人たちに告ぐ。ドライビングする愉しさに溢れていて、さらには欧州車好きに刺さるようなボディラインを持つ新型3008を、次の愛車リストにぜひ入れてみてはいかがだろう。

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  • 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)
  • 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)
  • 大学卒業後、ドキュメンタリー映像の助監督を経て出版業界へ。某建築雑誌の版元で編集技術をマスターし、クルマ系雑誌編集部のある版元へ移籍。その後、版元を渡り歩きながら興味の赴くままにカメラ雑誌、ガレージ雑誌、グラビア誌のほかにBMWやランボルギーニの専門誌などを立ち上げ、2017年までスーパーカー専門誌の編集長を務める。愛車はBMW E30 M3。日本旅行作家協会会員。近況は、個人ブログ「ART LIFE mag.」にて。
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