欧米の超有名フェラリスタたちに愛されたヒストリーと、ほぼ無事故のコンディション
1966年10月の税関オークションに出品され、クリスチャン・デペヌーが購入するまで、このフェラーリ250GT TdFは5年もの間、フランスの税制当局によって保管されていた。
いっぽう、世界的に著名なフェラーリ・コレクターであるピエール・バルディノンは、デペヌーがオークションで入手したと知るや否や、すぐにシャシーナンバー「0933GT」を彼から買い取った。そして、フランスのオーブッソンにある彼のプライベートサーキットつきミュージアム「マ・デュ・クロ」のテイストに合うよう、「ロッソ・コルサ」に仕上げ直した。
そののち、1975年から1977年にかけては「モエ・エ・シャンドン」で有名なフレデリック・シャンドン・ド・ブライユ伯爵が一時的に「0933GT」を所有したものの、再びバルディノンが買い戻し、さらに6年間にわたって彼の素晴らしいコレクションに所蔵されることになった。
そして1983年から40余年を経た現在に至るまで、ル・マンに3度参戦しているドミニク・バルディーニをはじめ、アンドレ・ビンダや著名な「ティフォーゾ(フェラーリファン)」であるミシェル・セドゥーなどが歴代のオーナーとなった。
その後、1997年から2001年にかけて、「0933GT」はオリジナルのオロ・キアーロで化粧直しされ、英国を拠点とするスペシャリスト「テリー・ホイル・レーシング・エンジニアーズ」社によって機械的なレストアが施された。さらに2004年には、オリジナルのロッソ・ボルドーのレザー張りを取り外し、コニャック色のレザーハイドでインテリアを張り直した。
ただ、これはフェラーリのコンペティションカーにはよくあることだが、このTdFはベネズエラでマルコトゥッリがレースで走らせていた時期に、オリジナルの3.0Lエンジンブロックの寿命が尽きてしまった。
重要なコンポーネントはすべてオリジナル
現在、このマシンに搭載されているエンジンブロックは、リノ・ファイエンのディーラースタッフが正規の手続きを経てカラカスで換装したものと思われる、通常の刻印がない正規品である。この交換用ブロックは、正確に「0933GT」と刻印されたオリジナルのタイミングケースに取り付けられたままである。
さらにフェラーリの歴史家で、自身も別の250GT TdFを所有していたジェス・プーレは、著書『Ferrari 250GT Competition Cars』(1987年刊)の中で、「0933GTは1960年頃に工場によってアップグレードされたエンジンコンポーネントが装着された」と記している。
また、フェラーリの第一人者であるキース・ブルーメルが提出した査定書によれば、「0933GT」のオリジナルの合金製ボディワーク、マッシーニの報告書に引用された内部番号を持つオリジナルのギアボックスとリアアクスルユニットが保存されていることが確認されており、これらの重要なコンポーネントはすべてオリジナルであると考えられている。
そして2006年に、今回のオークション委託者でもある現オーナーのコレクションに加わって以来、このクルマは「GTOエンジニアリング」を含む一流のスペシャリストから供給された部品を使用し、プライベートメカニックによって忠実にメンテナンスされてきたという。そして「カリフォルニア・ミッレ」や「コロラド・グランド」といった一流のツアー型ラリーイベントや、フェラーリ・クラブのワンメイクイベントの常連として、「0933GT」は日常的なドライブとメンテナンスを享受してきたとのことである。
期待に応えるオークション結果
今回18年ぶりに出品された「0933GT」には、「アウトモービリ・クラブ・ディターリア(ACI)」の承認証、マッシーニ氏とキース・ブルーメル氏の車歴レポート、レストアの請求書、歴史的な画像や通信、書籍、「ロッソ・ボルドー」のレザーが張られたオリジナルのツールキットなどが添付されている。
RMサザビーズ北米本社では、
「ツール・ド・フランスは、まぎれもなく最も魅力的な250GTのひとつであり、フェラーリのレースの系譜の中で重要な位置を占めている」
というアピール文を添えつつ、350万ドル~450万ドル(邦貨換算約5億4600万円〜7億200万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。
そして2025年1月25日に迎えた競売ではビッドが充分に伸びたようで、終わってみればエスティメートの想定内に収まる377万2500ドル、現在のレートで日本円に換算すると約5億7100万円で落札されることになったのである。



























































































