人気漫画にも登場していたヨタハチ
1982年から『週間少年ジャンプ』でクルマ漫画の連載が始まりました。そのタイトルは『よろしくメカドック』。国産チューニングカーに焦点を当てた草分け的作品で、現実的に身近な中古スポーツカーや最新車が登場するだけでなく、チューニングや最新技術の解説も掲載。この漫画でクルマに興味を持った人は数多く存在しますが、今回紹介する赤い「ヨタハチ」ことトヨタ「スポーツ800」のオーナー、宮崎大輔さんもまさにそのひとりでした。
過去の愛車のパーツの良いとこどりで完成した
トヨタ「スポーツ800」は1965年4月〜1969年10月の4年間生産された。宮崎大輔さんの愛車は1966年式だが、修理・レストアのために過去の所有車からパーツ移植を経て現存しているため、実際の構成部品は年式がバラバラだという。
「22歳の頃に最初の愛車としてヨタハチを買いました。知人から程度良好な個体を紹介してもらったのが、1965年式の個体でした。修理やメンテナンスなどをしながら乗り続けていたのですが、12~13年ほど前に箱替えをしています。最初の個体と知人から譲ってもらったドンガラのボディを組み合わせて、今に至ります」
エンジンは、1966年式のトヨタ「パブリカ」がベース。スポーツ800はパブリカのエンジンとシャシーをベースにしているため、乗せ換えは簡単だ。しかし、パブリカのU型と呼ばれる排気量700cc、空冷水平対向2気筒OHVエンジンは、スポーツ800が搭載していた2U型とは仕様が異なる。
そこで宮崎さんは、ショートシリンダー、カムや圧縮比の変更により、U型を2U型仕様にチューニングして搭載した。トランスミッションも後期型のフルシンクロタイプに変更するなど、パーツごとに使用年式などはバラバラだが、基本は純正スタイルを維持することを心がけている。
旧車といえば、ハコスカやフェアレディZが大人気だった世代
愛車の方が10年近く年上となる宮崎さん。世代的に旧車に興味を持つとしたら、「ハコスカ」や「フェアレディZ」といった日産のL型搭載車の方が圧倒的に主流のような気がする。しかし宮崎さんは、そこにはわき目もふらずスポーツ800への興味でいっぱい。その理由は、漫画『よろしくメカドック』の影響だった。
スポーツ800は、女暴小町(すけぼうこまち)こと、小野麗子の愛車として作品に登場する。チューニングショップのメカドックの常連であり、交機所属の警察官、小野誠三郎の娘の赤いスポーツ800が、宮崎さんがその存在を認識する橋渡しとなった。
「私が最初のスポーツ800を手に入れたのが22歳の頃は、高級車だったら日産 シーマ、走り屋だったらシルビアなどが流行っていた時代ですね。仮に旧車に興味を持つとしたら、みんなハコスカやフェアレディZを選びました。そんな時代に私がスポーツ800を買ったので、周りの友達からはよくバカによくされました」
それから28年。一度も浮気することなくスポーツ800への愛を貫き通している。当時、宮崎さんを笑った友人たちは、今では尊敬の眼差しで見ているに違いない。
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