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「ホンダ買うボーイ」で一世を風靡! 30年前にSUVを先取りしていた「CR-V」とはどんな車だった?【カタログは語る】

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎七生人(SHIMAZAKI Naoto)

クロカンのようなゴツいイメージが微塵もなかった

フレーム構造に対して重心が低いモノコックのメリットを活かしつつ、最低地上高は205mmを確保していた。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで、トレッドは前後とも1535mm。全幅1750mmのワイドボディの採用で高い安定性も確保していた。

実車の第一印象は、コンパクトで乗用車感覚がふんだんに盛り込まれた、まさに新感覚のライトクロカンだった。この初代CR-Vには、筆者は発売直前の北海道・鷹栖のテストコースでの取材が初対面だったが、一番に感じたのは親しみやすさ。スペアタイヤを背負ってはいたものの、それまでのクロカンのようなゴツいイメージが微塵もなく、運転席へも立ったままの姿勢からサッと乗り込めた。

さらに室内を見回せば前席から後席までフロアがフラットで整々としていて、前後左右のウォークスルーも自在。それらを実現するためにコラム式のシフトレバーや、折り畳み式の前席間サイドテーブルも採用されていた(全車ATの設定だった)。運転席からフードを見渡しながらの前方視界もスッキリと明るく、気負わずに運転ができ、ヘリンボーン柄の表皮のシートは、前後ともにリラックスして座っていられた。

当初は4WDモデルのみの設定

もちろん実用性にも長けていた。外側からいくとバックドアはガラスハッチと横開きのロワゲートを組み合わせたもので、ロワゲートには三角表示板を格納しておくフタ付きのポケットやフックを装備。カーゴルームのフロアボードはクルマから外せばテーブルとして九変化する仕掛けになっていた。シートアレンジも多彩だったが、フロントからリアをフルフラット状態にした際に前後シートがスムーズに繋がるように、後席をリクライニングで倒すとクッション部分が持ち上がり高さを微調整する機構も組み込まれていた。そしてラゲッジスペースを拡大する際には、クッションを前方にハネ上げたダブルフォールド式で畳め、こうすることでフロアが低くフラットなラゲッジスペースが作れた。

当初は2Lエンジン(B20B型、130ps/19.0kgm)を搭載した4WDモデルのみの設定でスタート。4WDシステムには、ホンダ独自のデュアルポンプ式を採用。これは前輪の回転数が後輪を上回った際に発生する油圧で多板クラッチを作動させてリアにも瞬時にトルクを配分するというもの。通常はFFとして低燃費と効率を求め、オフロードや雪道走行ではしっかりとした走破性を確保するという仕組みのシステムだった

CR-Vは当然ながらオフロード性能も確保したクルマだったから、しなやかなサスペンションストロークをもち、オフロードもオンロードも乗り味がしなやかで心地よく、穏やかなパワーフィールということもあり、ドライバーも同乗者も安心して乗っていられた。

初代CR-Vが登場した1995年当時というと、前年の1994年5月にトヨタから初代「RAV4」が登場。

それまでのヘビーデューティな4WDとは異なり、セダンから乗り換えてもサッと走らせられる馴染みやすさが魅力だった。「ホンダ買うボーイ」が登場時のキャッチコピーだったが、今のSUVの世界観を30年前に先取りしていた……そんな風に言ってもいいかもしれない。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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