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ブラック×レッドのフェラーリ「512TR」が約3870万円で落札!じりじりとマーケットが高騰中

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

徹底的に整備されコンディションにも注目

さらに2020年6月には燃料システムのオーバーホールが行われ、2個の燃圧調整器とともに、両方の燃料ポンプとすべてのホースが交換された。合計1万8904ドルに達したこの作業には、ヒューズボックスアッセンブリーの交換。それに加えて、以前取り付けられていたアフターマーケットの電子機器による電気的負荷の増加によって損傷していた、ワイヤーコネクターと端子の一部の交換も含まれていた。

こうしてようやく新車時のスペックに全面改修されたものの、その後もほとんど運転されない状況が続いていた。今回のオークション公式カタログ作成時のオドメーターが指しているマイレージは、依然として1万マイル(約1万6000km)強に過ぎない。

そして充分に記録されたヒストリーや希少で好ましい色の組み合わせが、この512 TRを類稀な魅力的なものにしているうえに、オリジナルのウインドウステッカーのコピー、ファクトリーマニュアルと保証書。1995年までのサービスインボイスを含むヒストリーファイルが添付されるなど、ドキュメントも揃っているとアピールされていた。

この512TRについて、RMサザビーズ北米本社は現オーナーと協議しつつ27万5000ドル~32万5000ドル(邦貨換算約4125万円〜4875万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。そして迎えた競売ではビッドが順調に伸びたようで、終わってみればエスティメートに収まる26万8800ドル、現在のレートで日本円に換算すれば約3870万円で競売人のハンマーが鳴らされることになった。

フェラーリ テスタロッサとそのファミリーのマーケット相場価格としては、生産数の圧倒的に少ない「F512M」がもっとも高く、512TRはそれに次ぐ評価というのが2010年代から続く相場感だった。もちろん、依然として円安基調の為替レートや、この512TR単体の魅力もあってのことだが、512TRのマーケット評価もF512Mに引っ張られるかのように、じりじりと高騰してゆく可能性が否めなくなってきているように感じられたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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