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右ハンドルのマセラティ「メラクSS」が約1080万円で落札!徹底したレストア作業のため18年間の走行距離はわずか700マイル

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

長期間のレストアを終えて……

結果として「ビトゥルボ」以前にもっとも成功したマセラティとなったメラクは1832台を生産したのち、1983年に生産を終了した。

今回のボナムズ「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに出品されたマセラティ メラクは、最終年にあたる1983年に生産されたSS。右ハンドルの英国仕様で、シャシーNo.は「460516」である。

このメラクSSは、1992年5月のオークションで落札されて以来16年にわたって所有していた故人の遺品として、2008年4月にヘンドンの「RAFミュージアム」において開催されたボナムズ社オークションに出品され、今回の売り主でもある現オーナーが購入した。

2008年当時の走行距離は4万2313km、その後「マックグラス・マセラティ(McGrath Maserati)」社に送られ、エンジンとギヤボックスの全バラシとリビルド、キャブレターのリビルド、クラッチを新品に換装。さまざまな電気系統の問題の修正、ステアリングラックの修理など、さまざまな機械的作業が行われた。いっぽうボディについては、腐食の修理と再塗装のためにボディショップに送られた。

ファイルにある関連請求書と写真で示される追加メンテナンスに掛けられた総額は約2万5000ポンド。さらに2017年から2019年にかけて、ウィスボロー・グリーンのインテリア職人ジェームス・E・ピアース氏によって内装の再整備とさまざまな加工が行われ、その費用は3万ポンドに及んだとのことである。

2008年の入手以来、現オーナーの所有権のもとで18年ものときを過ごしたことにはなるものの、その間に重ねたマイレージはわずか700マイル(約1000km)に過ぎない。それゆえ、レストア作業に入る前で車検はいったんペンディングとされ、現時点では2009年まで有効のMoT車検証が保管されている。

また、この長期レストアのさなかにあった2011年には、壊れていたスピードメーターを交換。マックグラス・マセラティ社が用意した交換用オドメーターは当時4万9300マイルを示していたいっぽう、オリジナルの壊れたオドメーターは約4万3500マイルを示していた。したがって実際に走行した距離は、現在のオドメーターに刻まれたものより、約6000マイル少ないことになる。

エスティメート内に収まった……?

このマセラティ メラクSSに対して、ボナムズオークション社では5万5000ポンド〜6万ポンド(邦貨換算約1035万円〜約1128万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。そして4月14日に行われた競売では、5万7500英ポンド、日本円に換算すると約1080万円で落札されることになった。

国際マーケットにおけるメラクの相場価格は、2010年代後半あたりにはかなり高騰していたようだが、ここ数年は高めのエスティメートを設定しても流札、ないしはいくらか値下げして販売される事例が多いようだ。今回のようにエスティメートの範囲内に到達して無事落札に至ったというのは、むしろレアケースといえなくもないのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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