スーパーカーの覇権を競ったデイトナ
2025年5月3日、名門ボナムズ・オークション社が「FIマイアミGP」に付随するかたちで開催したオフィシャルオークション「THE MIAMI AUCTION 2025」。そこには、生産最終年次にあたる1973年モデルのフェラーリ「365GTB/4 デイトナ」北米仕様が出品されました。
1960年代末における世界最速スーパーカーのひとつ
フェラーリは1968年のパリサロンにて、ドラマティックなウェッジシェイプのフラッグシップGT、新型365GTB/4を華々しくデビューさせた。このモデルは、1967年に北米フロリダ州で開催された「デイトナ24時間レース」において、フェラーリ「330P4」および「412P」が劇的な1-2-3フィニッシュを飾ったことにちなみ、自然発生的かつ非公式に「デイトナ」と呼ばれることになる。
当時、フェラーリのデザインワークを一手に引き受けていた「ピニンファリーナ」所属のレオナルド・フィオラヴァンティは、275GTBのクラシカルなスタイリングに不満を持っていたため、劇的な方向転換を図った。
後にピニンファリーナの研究開発部長を務めることになるフィオラヴァンティ。かつて中東クウェートで開催されたコンクール・デレガンスに際して数日間をともに過ごした筆者に、数あるフェラーリのなかでもデイトナがお気に入りであることを明かしてくれた
全長のほぼ半分を占めそうなほどに長大なフロントフードは、コンパクトなキャビンとショートデッキによって引き立てられ、その全身に湛えるデザイン効果は、名門ピニンファリーナがマラネッロのために手掛けた作品たちに見られる上品なエレガンスを保ちながら、逞しい「馬力」を示唆していた。
最初期のプロトタイプは、ピニンファリーナがトリノにて製作した。いっぽう、量産モデルのコーチワークは、デイトナのデビューから数年後にフェラーリの子会社となるモデナのカロッツェリア「スカリエッティ」に任されることになった。
ドライサンプやトランスアクスルなど速さのために投入された技術が満載
デイトナに搭載された総アルミ合金製4カムシャフトV12エンジンの排気量は4390ccで、最高出力は7500rpmで352psを発生した。ドライサンプ潤滑方式により楕円断面のチューブラーフレームの低い位置にマウントされ、5速ギヤボックスはリア側にシフトされたため50:50の前後重量配分が達成された。
ただし、このトランスアクスルレイアウトと4輪独立のウィッシュボーン+コイルスプリングのサスペンションは、先代の275GTB/4から踏襲されたものである。
エアコンとパワーウインドウはオプションとされながらも、それ以外の面ではゴージャスな仕立てとされたデイトナ。そのかたわらで最高のハイパフォーマンスを妥協することなく追求。スピードを簡単にむさぼることができた。最高速度は280km/hを標榜したデイトナは、当時の市販車としてはランボルギーニ「ミウラ」やマセラティ初代「ギブリ」とともに世界最速の座を競う1台だったのだ。
1973年にデイトナの生産が終了した時点で、生み出されたベルリネッタは1300台足らず、スパイダーに至っては123台(ほかに諸説あり)しか製作されることなく終わった。





















































































































































































