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WRCチャンピオン・ワークスマシンのランチア「デルタHFインテグラーレGr.A」は約8000万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

WRCで2度の優勝歴という輝かしいヒストリーを持つ1台

RMサザビーズ「MILAN 2025」オークションに出品されたランチア デルタHFインテグラーレ(シャシーNo.#458689)は、正真正銘の元「ランチア・スクアドラ・コルセ」ワークスカー。しかもWRC選手権戦で2回の優勝を成し遂げたという、栄光のヒストリーを有する個体である。

1989年2月の「ラリー・ポルトガル」でデビューしたこの#458689は、2度のWRCチャンピオンであるミキ・ビアジオンと、コドライバーのシヴィエロ・ティツィアーノが搭乗して優勝。このラリーにおけるHFインテグラーレのポディウム独占を、最上位から演出した。

そののち「TO74784L」として再登録され、次に同年4月のヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)戦の「ラリー・コスタ・ズメラルダ」にて名手マルク・アレンが操縦したものの、リタイアを喫してしまう。

しかし4か月後の1989年8月、「ラリー・アルゼンチン」でこのマシンを委ねられたミカエル・エリクソンは30ステージを制し、#458689にとっては2度目となるWRC優勝を獲得。さらに1978年のワールドタイトル獲得者であるアレンが、翌9月のWRC戦「オーストラリア・ラリー」で3位を獲得した。

そして、これらの3度のWRC出場は「ランチア・スクアドラ・コルセ」とミキ・ビアジオンに、1989年シーズンのWRCメイクスタイトルとドライバーズタイトルのWタイトル、すなわち完全制覇をもたらすことになったのだ。

ファクトリーチームでの目覚ましい活躍のあと、有力プライベーター「スクデリア・キッコ・ドーロ(Scuderia Chicco d’Oro)」に払い下げられたこの個体は、複数の国内イベントに出場するいっぽう、1991年シーズンには「アルゼンチン」および「サン・レモ」のWRC戦にもスポット参戦。さらに1992年シーズンには当時の新進ドライバー、ラウル・マルキシオがイタリア国内選手権戦で3度にわたってこのHFインテグラーレを走らせ、一定の成功を収めたといわれている。

ポルトガル・ラリー当時のカラーリングを再現

そして約四半世紀前、この元ワークスのランチアHFインテグラーレは、グループB時代のスプリントドライバーであった現オーナーが入手して、彼の管理のもとアバルトのメカニックによって修復されることになった。そのため、1989年スペックのワークス「8V」、ポルトガル・ラリー当時のマルティーニの塗装を再現しているとのことである。

RMサザビーズ欧州本社は、その公式カタログで

「WRCイベントで2度優勝し、WRCタイトルを2度獲得したこのランチア デルタHFインテグラーレは、ふたりのWRCの偉大なドライバーによって運転されたことで卓越した血統を得ました。コンペティションをテーマにしたコレクションには重要な1台となるでしょう」

とアピールするとともに、48万5000ユーロ〜55万ユーロ(邦貨換算約7905万5000円〜8965万円)というエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。

そしてミラノ市内、「ミラノ・コレクション」のファッションショーなども開かれているコンベンション施設にて挙行された競売では、エスティメートに収まる49万ユーロ。現在のレートで日本円に換算すれば、約8000万円というけっこうな落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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