予測不能な一日が生んだ奇跡
優勝を飾ったストフェル・バンドーン選手は、
「久しぶりの勝利でちょっと変な感じがしますが、本当に嬉しいです。予想外に見えるかもしれませんが、勝てる可能性は十分にあると思っていました。序盤に多くのエネルギーを使って早めにピットブーストを行う大胆な戦略をとりました。
作戦通りにすべてが進むのはフォーミュラEでは非常に珍しいのですが、今日はそのとおりに事が運びました。ピットブースト後のエネルギー管理は大変でしたが、エンジニアのティボーが冷静にサポートしてくれたおかげで、必要なペースコントロールとバッテリーの節約ができました」
とコメントした。またマセラティ・コルセ責任者であるマリア・コンティ氏は、レース後このように語った。
「予測不能で信じられない1日でした。2024年に続く東京での勝利は、感無量です。この市街地サーキットは非常にテクニカルで魅力的であり、雨とピットブーストにより、さらに予測不可能な展開となりました。世界でも象徴的な都市・東京の中心で、温かいファンの皆さまに囲まれて、忘れられない感動を体験しました。
マセラティが築いてきた約100年のモータースポーツの歴史に、またひとつ記憶に残る章を加えることができました。チームの努力、完璧な戦略、そしてストフェルの決意が、この勝利をもたらしてくれました。明日も全力で戦い、トップ争いに挑みます」

AMWノミカタ
現在のフォーミュラEはどのチームもGen3の共通のプラットフォーム、バッテリー、ボディー、タイヤを使用する。故に大きな差を生み出せるのはチームの戦略となる。通常は300kWのモーターで2輪を駆動させるが、レース中に8分間だけ350kWのパワーを生み出し、4輪駆動で走行できる「アタックモード」を使用することができる。この「アタックモード」をどのタイミングで使用するかが勝敗を分けるひとつの鍵となる。
また、第8戦ではレース中にピットレーンで30秒間で600kW超高速充電を行い、レースカーに10%(3.85kWh)のエネルギーを追加供給する新機能「ピットブースト」を各チームが行わなければならないルールとなっていた。ピットに入れるタイミングも戦略の重要な鍵となる。今回のマセラティはどのチームよりも早く「ピットブースト」を行い、レース後半にタイムロスをなくす作戦を立てた。スタート順位が後ろだったため、いわば「賭け」に出た訳だが、これが功を奏した結果となる。
これまでのフォーミュラレースと違いエンジンサウンドはなく、静かなレースとなるが、電力の放出と回生なども巧みに制御することが求められるじつにインテリジェントな戦略ゲームであることがわかる。都市型レースというのも魅力である。ルールが浸透すれば今後大きくファンを拡大できるのではないだろうか。
































