1936年にディーゼル乗用車を販売したメルセデス・ベンツ
石油危機以来のガソリン価格の急騰から、その経済性が注目されたディーゼルエンジン。今日ではパワフルでクリーンディーゼルの乗用車が国内外で登場しています。そのようなディーゼルエンジンを搭載する乗用車のルーツを辿ると、じつは1936年に登場したメルセデス・ベンツの260Dなのです。以来、今日までディーゼル乗用車を休みなく生産しているパイオニアでもあります。その技術革新(環境適合性)と経済性・耐久性・信頼性には定評があり「メルセデスディーゼル党」と呼ばれるオーナーが世界中に数多くいます。そこで、今回はメルセデス・ベンツのディーゼル乗用車にスポットを当て紹介します。
画期的な燃焼室形状が考案されるが複雑すぎて頓挫
ディーゼル・エンジンの起源は、1892年にドイツ人の発明家ルドルフ・ディーゼル(1858-1913年)の発表した「効率のよい熱エンジン」と題する論文である。1897年、ディーゼル博士の理論に基づいた圧縮点火式エンジンの発想に共鳴したアウグスブルク機械工場で世界初の実用ディーゼル・エンジンが完成したが、1907年にはディーゼル・エンジンに関する主要特許が失効。このディーゼル・エンジンの特許が切れると同時にマンハイムのベンツ社がこの開発研究に本腰を入れ始めた。
1909年、ベンツ社のチーフエンジニアであったプロスペル・ロランゲ(1876-1939年)が主燃焼室と予燃焼室に2分化した画期的な燃焼室形状を考案した。予燃焼室内に燃料を噴射し、着火性のよい混合気を形成して圧縮点火。燃焼する混合気は主燃焼室に入り、ここで空気を有効に使い燃焼を続ける。さらに予燃焼室式インジェクション・システムを開発し、特許を取得している。
ところが現実にエンジンを製作するには大きな困難が伴い、第1次世界大戦後まで未完成として棚上げされていた。
ベンツとダイムラーが合併!ボッシュの燃料噴射ポンプがディーゼルを一気に進化させた
ところが、いつの世も戦争直後は、物資不足と経済的な燃費が渇望される時期でもある。1919年には、プロスペル・ロランゲがこの予燃焼室式ディーゼルの改良開発を再開して「通気孔に関する特許」で問題を解決した。1923年にマンハイムのベンツ社は、世界初のディーゼルトラックの開発に成功した(5トン積みトラックに4気筒ディーゼル45ps/1000rpmを搭載)。ちなみに1926年6月に、第1次大戦後の不況により、ドイツ銀行を通じてダイムラー社とベンツ社が合併して、ダイムラー・ベンツ社となった。
1927年にはドイツ人のロベルト・ボッシュがディーゼル・エンジンに画期的な燃料噴射ポンプを完成させ、難しい燃料噴射制御方式の開発と製作に対する重荷から解放された。
1936年2月にダイムラー・ベンツ社は、ベルリンオートショーで世界初のディーゼル乗用車260D(W138型)を発表する。2.6L 4気筒ボッシュ燃料噴射ポンプ付きで、最高出力は45PS/3.000rpmを発揮。主にタクシーとして使用されたが、自家用の4ドア・リムジン、カブリオレ、プルマンリムジン、プルマンランドウも造られた(1936-1940年)。




















































































































