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「EQA」と「EQS SUV」がフロントオフセット衝突した結果は…? メルセデス・ベンツはEVでも安全性のパイオニアだった理由を徹底解説

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

  • メルセデス・ベンツがBEVを「EQ」と命名して登場させたのが2016年のフランクフルトモーターショー
  • 2016年12月に新たに完成したジンデルフィンゲンのメルセデス・テクノロジーセンター(MTC)
  • フロントオフセット衝突の後、EQAとEQS SUVの客室と高電圧バッテリーは無傷で、ドアを開けて高電圧システムが自動的にシャットダウンされるなど高い安全性が確認された。緊急時には乗員が自分で車両を降りたり、救助隊員が乗員を車両から救助することが可能となる
  • EQS SUVの模式図。「Defining Electric Safety」キャンペーンで、世界で最も安全な車を製造する8段階の安全コンセプトが、車両のフロアにあるバッテリーを保護する
  • メルセデス・ベンツの高電圧保護システム
  • 全てのHVエレメントを車両の衝突防止領域に配置し、車両のフロアにあるバッテリーを保護。とくにEQSのドアシルには、大容量のアルミニウム押し出し材が使用されており、安定したバッテリーケースと他対策の組み合わせにより、高電圧バッテリーの事故安全性が高くなっている
  • EQSの高電圧バッテリーは衝突防止エリアのパッセンジャーセルの下に配置。足元スペースの切り込みにより安定したハウジングに囲まれたバッテリー内部が見える
  • EQSのセーフティボディ。材質構造は、アルミニウム、鋳造アルミニウム、高張力鋼、超張力鋼である
  • EQSはアルミニウムを多く含む素材をインテリジェントに組み合わせている。高強度の鋼から作られた補強材は、高い安全要件を達成するために使用されている
  • EQSのインテグラルセーフティコンポーネント。ボディシェルの各種材料はさまざまな色で示され、押し出しアルミニウムプロファイルのドアシル構造など、車両の衝撃吸収分散ゾーンを形成。車内にはシートベルトやエアバッグなどの各拘束システムが見て取れる。運転支援システムや受動的安全性システム作動に関する情報を提供するセンサーは黄色で明示
  • EQSのインテグラルセーフティコンポーネント。ボディシェルの各種材料はさまざまな色で示され、押し出しアルミニウムプロファイルのドアシル構造など、車両の衝撃吸収分散ゾーンを形成。車内にはシートベルトやエアバッグなどの各拘束システムが見て取れる。運転支援システムや受動的安全性システム作動に関する情報を提供するセンサーは黄色で明示
  • EQSのサイドドアのアルミニウムシートの下には、押し出しアルミニウムプロファイルがあり、側面衝突が発生した場合にボディ構造に衝突力を分散させる
  • 約150個のセンサーを備えたダミーで衝突テスト中の正確な力と経路を測定でき、怪我の可能性について結論を出すことができる
  • EQAとEQS SUVには、それぞれ2体の大人用ダミー(合計3人の女性と1人男性)を乗せてテスト
  • メルセデス・ベンツは2024年3月、自動車メーカーとして世界初のX線衝突テストを実施。テスト車両の上のホール天井に設置された高速X線加速器は、毎秒最大1000枚の高解像度画像を生成し、以前では見えなかった車両内部構造とダミーの変形プロセスを可視化する
  • メルセデス・ベンツは2024年3月、自動車メーカーとして世界初のX線衝突テストを実施。テスト車両の上のホール天井に設置された高速X線加速器は、毎秒最大1000枚の高解像度画像を生成し、以前では見えなかった車両内部構造とダミーの変形プロセスを可視化する
  • 毎秒1000枚のX線画像を撮影。写真は、そのうちの1枚のX線静止画像
  • 2016年新たに完成したジンデルフィンゲンの近代的なメルセデス・テクノロジーセンター(MTC)
  • 2016年新たに完成したジンデルフィンゲンの近代的なメルセデス・テクノロジーセンター(MTC)の内部
  • 2016年新たに完成したジンデルフィンゲンの近代的なメルセデス・テクノロジーセンター(MTC)では毎年最大900回の衝突テストを行っている。写真はEQC
  • 2016年新たに完成したジンデルフィンゲンの近代的なメルセデス・テクノロジーセンター(MTC)では1700回のスレッドテストを実施し、つねに革新の安全性を追求
  • EQS SUVの模式図。「Defining Electric Safety」キャンペーンで、世界で最も安全な車を製造する8段階の安全コンセプトが、車両のフロアにあるバッテリーを保護する
  • メルセデス・ベンツは2024年3月、自動車メーカーとして世界初のX線衝突テストを実施。テスト車両の上のホール天井に設置された高速X線加速器は、毎秒最大1000枚の高解像度画像を生成し、以前では見えなかった車両内部構造とダミーの変形プロセスを可視化する
  • メルセデス・ベンツは2023年10月、2台のBEVのフロントオフセット衝突を自動車メーカーとして世界で初めて実施。右がEQAで左がEQS SUV

2台の「EQ」を衝突テストしてEVの安全性を実証

メルセデス・ベンツでは1939年から安全性の研究開発をスタートし、「安全なクルマ」というブランド価値を確立するとともに、特許を無料で公開してきました。クルマの安全性を追求し続けるメルセデス・ベンツの姿勢は、最新のEVにおいても変わることがありません。2023年に行われた、自動車メーカーとして世界初のBEV同士のフロントオフセット衝突実験を紹介します。

自動車メーカーとして世界初のBEV同士の正面衝突テスト

メルセデス・ベンツがBEVを「EQ」と命名して登場させたのが2016年のフランクフルトモーターショーであり、ここで「EQCコンセプト」を発表してから9年が経った。EQとは「Electric Intelligence」を意味し、メルセデス・ベンツの電動モビリティブランドとして、矢継ぎ早な攻勢でワイドレンジのラインアップを構成した。

しかも、メルセデス・ベンツはBEVでも安全性のパイオニアである。2023年10月、メルセデス・ベンツは2台のBEVのフロントオフセット衝突を公に世界で初めて実施している。「EQA」と「EQS SUV」は実際の事故シナリオに則ってそれぞれが56km/hで走行し、50%が重なり合う形での正面衝突テストを実施した(2016年に完成したジンデルフィンゲンのメルセデス・テクノロジーセンター内)。

その結果、両車の客室と高電圧バッテリーは無傷で、ドアを開けて高電圧システムが自動的にシャットダウンされるなど高い安全性が確認された。これにより、緊急時には、乗員が自分で車両を降りたり、救助隊員が乗員を車両から救助することが可能になる。

全ての安全装置が機能して優れた乗員保護を実証

メルセデス・ベンツは新しい「Defining Electric Safety」キャンペーンを通じて、全電動モデルの安全機能に焦点を当て、BEVにおける感電や高エネルギーの短絡のリスクを防止するため、多段高電圧(HV)安全コンセプトを開発した。

このシステムには、バッテリーと電圧60Vを超える全てのコンポーネントの安全性を確保するため、8段階の重要な安全コンセプトがある。例えば、正と負の別々の配線や重大な衝突が発生した場合、自動的にスイッチがオフになる自己監視高電圧システムが挙げられる。

また、設計者は全てのHVエレメントを車両の衝突防止領域に配置し、車両のフロアにあるバッテリーを保護する。とくにEQSのドアシルには、大容量のアルミニウム押し出し材が使用されており、安定したバッテリーケースと他の対策の組み合わせにより、高電圧バッテリーの事故安全性が高くなっている。

EQSのセーフティボディの材質構造は、アルミニウム、鋳造アルミニウム、高張力鋼、超張力鋼である。加えて、アルミニウムを多く含む素材をインテリジェントに組み合わせて、高強度の鋼から作られた補強材は、高い安全要件を達成するために使用されている。とくに、EQSのサイドドアのアルミニウムシートの下には、押し出しアルミニウムプロファイルがあり、側面衝突が発生した場合にボディ構造に力を分散させるようになっている。

2023年の衝突テストでは、EQAとEQS SUVはそれぞれ2体の大人用ダミー(合計3人の女性と1人男性)を乗せてテスト。ダミーごとに最大150もある測定ポイントを分析すると、重傷から致命傷のリスクが低いことが分かった。これはクラッシャブルゾーンと高度な拘束システムが、深刻度の高い衝突時に非常に優れた乗員保護をしていることを意味している。つまり、高電圧システムの自動シャットダウン、エアバッグやベルトフォースリミッター付きベルトテンショナーなど、全ての安全装置が機能したということである。

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