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廃棄される自動車用本革シートが肥料として生まれ変わる!食用牛を使用したミドリオートレザーの循環型本革製品とは

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)

  • 和牛の革を使ったシート用の素材を作っているミドリオートレザー
  • 和牛の革を使ったシート用の素材を作っているミドリオートレザー
  • シートの製造過程で出た端材を加圧蒸製したのち粉砕すると飼料になる
  • 地産地消であり、同時に地域循環型(彼らは地循と呼んでいる)の輪を作ることに成功した
  • 山形に本社を置くミドリオートレザー社では、山形牛を使いシートを作る。ミドリ安全の1部門でもある
  • ブース内では仕上げの種類を紹介していた
  • のれんに惹きつけられ、多くの人が吸い込まれるように入っていった
  • 職人が丁寧に編み込んだ竹細工がモチーフのパーフォレーションをアクセントに再現

山形牛を使ってシートを作り、肥料として再利用

山形県山形市に本社を構える「ミドリオートレザー」。人とくるまのテクノロジー展の会場内ではひときわ異彩を放っていました。なんとブースまわりに暖簾がかかっているのです。まるで引き寄せられるようにブースに入り込んでいきました。そこに書かれていた見出しもじつにユニークである。曰く、「和牛の本革」と思わずその真意を知りたくなりお話を聞くことにしました。

地域循環型の輪を作ることに成功

和牛の革を使ったシート用の素材を作っているミドリオートレザー。もちろんこの会社は総合表皮材メーカーだから、本革シートを作るのは当たり前。しかし、近年の本革は持続可能ではないということで、従来のファブリックやフェイクレザーに置き換える自動車ブランドが多いなかで一体なぜ? となった。が、その説明を聞いて納得した。

これは長いスパンでのCO2削減(だけではないけれど)を目的とした取り組みだというのである。我々が食用としている、いわゆる黒毛和牛がその原料である。食用の肉を取った後に残るのは革だ。これは廃棄するためには燃やす必要があり、燃やせば当然CO2を排出する。

そこで、そうした本革を使って、鞣しにも植物由来成分を使うことで、環境に配慮したシートができる。問題というか本題はここからで、そのシートが自動車を解体する時には処分されるのだが、この廃棄するシート素材を再利用して(実際にはそれだけでなく端材なども使う)、これを加圧蒸製した後で粉砕することができる。じつは、これにはリンや窒素などが含まれていて、牛の飼料となる牧草の育成に使えるというのである。

山形に本社を置くミドリオートレザー社では、山形牛を使いシートを作る。それをまた飼料として再利用することで、循環型の本革製品としたのだ。これを新商品「CircuLether」として投入した。まさに地産地消であり、同時に地域循環型(彼らは地循と呼んでいる)の輪を作ることに成功したというわけである。

会社の沿革を見てもう1度驚いた。元々北洋皮革工業という名で1946年に創業したこの会社は、やがてミドリ安全工業(株)と業務提携。そしてミドリ安全が事業を引き継いで今に至る。つまりあの安全靴などで有名なミドリ安全の一部門というわけである。

現在の社名となったのは2015年。今ではアメリカやドイツメキシコなどにも現地法人を持つ。本革シートはもちろん、日本の和牛だけを使っているわけではなくグローバルな調達をしており、このCircuLetherと名付けられた商品はクロムフリーの鞣し工程で作られる。なかなかユニークな取り組みである。

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  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 幼いころからクルマに興味を持ち、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾る。 大学在学中からレースに携わり、ノバエンジニアリングの見習いメカニックとして働き、現在はレジェンドドライバーとなった桑島正美選手を担当。同時にスーパーカーブーム前夜の並行輸入業者でフェラーリ、ランボルギーニなどのスーパーカーに触れる。新車のディーノ246GTやフェラーリ365GTC4、あるいはマセラティ・ギブリなどの試乗体験は大きな財産。その後渡独。ジャーナリスト活動はドイツ在留時代の1977年に、フランクフルトモーターショーの取材をしたのが始まり。1978年帰国。当初よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動し、すでに45年の活動歴を持つ。著書に三栄書房、カースタイリング編集室刊「世界の自動車博物館」シリーズがある。 現在AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)及び自動車技術会のメンバーとして、雑誌、ネットメディアなどで執筆する傍ら、東京モーターショーガイドツアーなどで、一般向けの講習活動に従事する。このほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」で自動車関連出品の鑑定士としても活躍中である。また、ジャーナリスト活動の経験を活かし、安全運転マナーの向上を促進するため、株式会社ショーファーデプトを設立。主として事業者や特にマナーを重視する運転者に対する講習も行っている。
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