シビアなハンマープライスの理由は…?
このフェラーリ642F1ジュニアカーに、ボナムズ社は3万〜4万スイスフラン(邦貨換算約537万円〜716万円)という、かなり強気とも映るエスティメート(推定落札価格)を設定。そのうえで「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
この「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、強制的に落札されてしまうリスクも内包している。
今回の「THE BONMONT SALE」におけるジュニア642では、後者のリスクが発動。競売ではビッド(入札)がまるで伸びなかったのか、終わってみればエスティメート下限の半額にも満たない1万8400スイスフラン、つまり日本円に換算すれば約337万円で落札されることになったのだ。
この非常にシビアなハンマープライスの理由について考えられるのは、まずモデルとなった642が、F1GPにおけるフェラーリの暗黒期の端緒を開いてしまった失敗作。つまりは、いわゆる「ティフォージ」にとっての不人気車であることも大きく作用しているのは間違いあるまい。
しかし、そんな残念な事実もさることながら、なによりこのジュニアカーのスタイリングやディテールがフェラーリ642の特徴をあまり示しておらず、当時のF1マシンの最大公約数的なデザインとなっている。意地の悪い見方をすれば、カラーリバリーとデカール類だけでフェラーリであることを表現しているに過ぎない……、とさえ感じられてしまうことが、コレクターたちに「刺さらなかった」大きな理由にも思われる。
「チルドレンズ・カー」あるいは「ジュニアカー」が百花繚乱のごとくマーケットを賑わしている現在にあって、すっかり目を肥やしてしまったコレクターの審美眼に適うというのは、決して容易なことではないのだろう。








































































