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FIA GT選手権GT1クラスを席巻したメルセデス・ベンツ「CLK-GTR」の実力

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG

FIA GT選手権1998年シーズンは全勝で連覇を果たす

AMGメルセデスは当初、FIA GT選手権の第2シーズンとなる1998年もCLK-GTRを使用し続けた。しかし、レギレーションによる出力制限に対応し、第3戦以降および6月のル・マン24時間レースから6LV12気筒エンジンを5L V8気筒に換装してCLK-LMへと進化。外観上ほとんど区別がつかないこのCLK-LMは6月のル・マン24時間レースのために開発され、ワークスマシンとして登場した時には大きな注目を浴びた。

それはフル・ワークス体制としては1955年以来、1989年にワークス復帰を果たしたシルバーアローが1・2フニュシュして以来のことだからだ。しかし、残念ながらCLK-LMの1998年のル・マン24時間レースはリタイアで終わる。

1998年のFIA GT選手権は、10月25日のカリフォルニア州ラグナ・セカで行われたシーズン最終戦でクラウス・ルートヴィヒ/リカルド・ゾンタ組がCLK-LMでドライバーズチャンピオンを獲得した。振り返ればAMGメルセデスが1998年シーズンを全戦優勝しコンストラクターズタイトルを獲得して連覇を達成。1997年の準優勝者に終わったクラウス・ルートヴィヒがFIA GTチャンピオンを獲得する。

翌1999年はGT1カテゴリーが消滅し、CLK-LMはル・マンGPプロトタイプ(LMGTP)のメルセデス・ベンツCLRに進化した(5.8L V8気筒エンジン搭載)。優勝候補と言われていたCLRは、サルト・サーキットで予選から本選にかけて3度も宙を舞ってしまった。ドライバー達は無事であったが、メルセデス・ベンツはこの耐久レースへの参戦を中止して、F1に注力していくことになる。

CLK-GTRロードカーは612psのM120型エンジンを搭載

631psを発揮するGT122型5986cc V12気筒エンジンをミッドシップに搭載したCLK-GTRの最大の特徴は、市販ロードカーとしてのデザインである。FIAの規則で、公道仕様のCLK-GTR(C297型)はホモロゲーション取得のために25台が製造された。しかし、この320km/hのスーパースポーツカーの購入者は、ドライサンプ潤滑やチタン製コネクティングロッドやバルブなどのほか、最適化が施されたM120から派生したレースカーのエンジンを手に入れることができなかった。その代わり、プロダクションカーには6.9L V12気筒、出力612psを発揮するエンジン(タイプM120)が搭載された。

厳格な審査をしたというが日本の芸能人でも購入できた

1999年当時の価格は307万4000マルク(日本円に換算すると約2憶5000万円)と非常に高額であった。購入時にはAMGによって厳正に審査された上で、プロによるドライビングレッスンを受けることが義務付けられていたといわれる。とはいえ、当時は現在ほど厳しく審査基準が徹底した時代ではなく、正規輸入や並行輸入まで存在したといわれている。日本へは数台輸入され、そのうちの1台は音楽プロデューサーの小室哲哉氏だったのは有名な話である。

通常バージョンの市販が一定数に達した段階の2002年には、V12気筒エンジンを搭載したオープントップのCLK-GTRロードスターも登場した。

今や、スーパースポーツカーの人気は急上昇し、現在のCLK-GTR相場は新車時の2倍以上といわれている。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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