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15年越しの恋を実らせ購入したいすゞ「ベレットGTR」は「修理地獄」への登竜門!旧車オーナーが語る笑いと涙のレストア記【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)

レストアという名の終わらない苦闘

白いベレG-Rが我が家にやってきて、いよいよレストア作戦の開始である。ボディは想像していた通り、あちこち波打っている。それよりも厄介だったのは、70km/hを超えると途端にものすごい振動に見舞われることだった。バックミラーなど全く見えなくなる。

とにかく、まともに走るようにしなければ話にならない。安くしてもらった分、「現状渡し」と釘を刺された手前、その中古車ディーラーには持ち込めない。そこで、近くのいすゞの工場に持ち込んで、振動がひどいことを告げ、早くもドック入りとなった。

およそ1週間後、件の工場から電話があり、プロペラシャフトを固定する4本のボルトのうち、2本が抜け落ちていたことが報告された。そして、これでも完全には止まらず、かなりひどい事故を経験していることも宣告されてしまった。

それでも、最初よりはかなりマシになって戻ってきたGTRを、いよいよ化粧直しに取り掛かる。紹介された塗装屋に持ち込んでみた。

「こりゃあ中村さん。やってもいいけどさ。ボディパネル全部新しくしなきゃ、全塗装しても無駄だよ。パネルとゴム関係探してよ」

と塗装屋の社長(加藤さん)は言った。

理由は、パネルが波打っているから、板金するよりも新しいものに替えた方がはるかに安く、仮に全部板金したらえらく高くつくというものだった。ちなみにゴム関係というのは、ボディを全塗装する時に外すシーリング用のゴムが、再利用できなくなるから、新しいものを準備してほしいということだ。通常は塗装工場で調達するが、もう作られていないクルマとなると、一般的な塗装屋では調達が難しい。そこでオーナーにお願いしたのである。

ボディパネルがすべて見つかるという奇跡

しかし、ベレGのボディパネルなど、果たして手に入るのだろうか。頼るところがないので、仕方なく、プロペラシャフトを直してくれたいすゞの工場で聞いてみた。

「一応パーツは全部コンピューターで管理してますし、全国オンラインですから、どこかにあれば必ず引っかかります。でも、絶対にあるという保証はできませんよ」

いざとなれば業界の裏道を使えば何とかなるだろうと、案外気楽な気持ちで待つこと2週間ほどで、吉報が入った。

「中村さん。ありましたよ。トランクリッド以外は全部あります」

「全部取ってもらうと、いくらぐらいですかね」

「前後左右のフェンダーとドア2枚、それにラバー合わせてで10万は行きません」

信じられないような価格が返ってきた。

1枚5万円ぐらいするかと思っていたので、ほとんど反射的に

「じゃあ全部取ってください」

と言ってしまった。

それから塗装工場にも電話。

「加藤さん。ベレGのパネル、全部手に入りますよ」

「そうですか。じゃあやりましょうか。でも時間かかりますよ」

「いいです。ただ、3月末に筑波のヒストリックカー・フェスティバルで走りたいんですけど」

「わかりました。それまでなら大丈夫です。早速、色を決めに来てください。例のデュポンのいいやつでやりましょう」

と快く引き受けてくれた。

塗装工場のオーナーである加藤さんに、そのデュポンのペイントが如何にいいか散々聞かされていたが、正直なところ、よくわからなかった。ただ、ベレGをやる前に、もう1台塗ってもらったクルマも同じペイントで非常に良い仕上がりだったので、今回もそれでやることにしただけだ。

「基本的にはブリティッシュグリーンにしたいんですけど、あまり濃くないやつありますか」

「電話では何ですから、来てサンプル見てくださいよ」

というわけで、サンプルで決めた色は、かつてミニ・クーパーなどに塗られていた、ややくすんだグリーンに決まった。

 

「よしよし。これでマッキナ・ヴェルデ(イタリア語で「緑のクルマ」)が出来上がるぞ」

と思いつつ、頭に広がった妄想は、早くも筑波のコースを走るマッキナ・ヴェルデの姿だった。しかし、ただパネルを替えて塗装という簡単な工程では済まなかったのである。

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