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レース参戦を果たせなかった悲運のマシン! 幻のレーシングカー「P70」が約1億700万円で落札

レース参戦を果たせなかった悲運のマシン! 幻のレーシングカー「P70」が約1億700万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2025 Courtesy of RM Sotheby's

デ・トマソ愛好家たちによって残骸からの復活

デ・トマソP70の残骸を手に入れた新オーナーの目的は、当初は完成車としての組み立てだった。しかし、このプロジェクトでは必要に応じて新品のサスペンションとブレーキ部品でシャシーをリビルドするほか、オリジナルスタイルのFRPフロントボディセクションと鋳造アルミニウムホイールを新規製造する作業も必要となった。

動力面では、1968-69年のル・マン24時間レースにて優勝したジョン・ワイアの「ガルフGT40」に採用されたものと同様の「ガーニー・ウェスレイク」製アルミニウムヘッドを装着したフォード・スモールブロックV8エンジンが搭載された。

2005年8月のモントレー・カーウィークに際して行われたコンクール・デレガンス「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」にて、未完成の状態のまま展示されたP70は、2013年4月に今回のオークション出品者でもある現オーナーに売却され、より包括的なレストア作業が着手される。

そして2013年8月の「ザ・クエイル」内で開催されたピート・ブロック追悼イベントでレストアを終えたP70が展示された上に、「モーター・トレンド・エディターズチョイス・アワード(Motor Trend Editor’s Choice Award)」を受賞。3年後の同じイベントでも「戦後最優秀レースカー賞(Best Post-War Racing Car)」を受賞した。また、2016年の「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」でも展示されている。

今回の「Monteray 2025」オークション出品に際してRMサザビーズ北米本社は、その公式カタログ内で「シェルビーとデ・トマソの愛好家にとって、この超希少で興味深い競技用/展示用マシンは、モータースポーツ史上もっとも意外なコラボレーションの産物であり、世界中のスポーツカーレース愛好家を魅了することでしょう」と歴史的価値をアピール。75万ドル〜100万ドルの予想落札価格(日本円で約1億1070万円〜1億4760万円)を設定した。

そして迎えた8月16日のオークション当日。モントレー市内の大型コンベンションセンター、および今年からは隣接するホテルにも会場を広げて挙行された対面型競売では、入札がいまひとつ伸び悩んだようで、入札締め切りに至っても予想落札価格の下限に届かない72万ドルで、競売人のハンマーが鳴らされるに至った。

とはいえ、現在の為替レートで日本円に換算すれば約1億700万円という落札価格は、レース歴のないレーシングカーに下される判定としては十分に高価であると感じられるかもしれない。それでも、この夏のモントレー・カーウィークでもプレゼンテーションが行われていた最新の「デ・トマソP72」のモチーフとなった、世界でただ1台だけのオリジナルと思えば、この落札価格も理に適ったものと感じられるのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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