435馬力のチューンドエンジンを搭載した伝説の「レッドデビル」
クワトロ、そしてスポーツ クワトロの活躍によって確立されたアウディのスポーティなブランド・イメージは、WRCに並行してさらにアメリカでのモータースポーツ参戦が始まったことで、より強固なものになる。
そのきっかけとなったのは、ミネソタ州のチャンハッセンに在住するレーサーであり、また北米のアウディ・クラブ創設者でもあるフランク・ベドール・ジュニア氏からアウディの本社に届けられた一通の手紙だった。
氏は1985年のパイクスピーク国際ヒルクライムに、ファクトリードライバーが駆るスポーツ クワトロを緊急参戦させることを提案した。その一方で、自らとその妻、そして3人の息子のために合計5台のスポーツ クワトロをアウディから提供させ、その対価としてさまざまなモータースポーツ・イベントにおいて、アウディのレーシング・スピリットを体現してみせることを約束したのだ。
「レッドデビル」という愛称で呼ばれる出品車のスポーツ クワトロはそのなかの1台である。1986年から1998年にかけて末息子のデイビッド・ベドールによって、もっとも大きな成功を収めたモデルだ。
レッドデビルが伝説のスポーツ クワトロとされるもうひとつの理由は、アウディ・スポーツの伝説的なエンジン・ビルダー、ハインツ・レーマンによる徹底したエンジンチューニングの手によって、搭載される直列5気筒ターボエンジンが435psにまで強化されていたことだった。
RMサザビーズはこのような事情も考慮して、このレッドデビルに40万ドル~50万ドル(邦貨換算約5887万円~7359万円)の予想落札価格を提示した。しかし入札はその数字を超えても止まることはなかった。最終的にハンマーが振り下ろされた時に示されていた価格は64万3000ドル(邦貨換算約9464万円)である。それは誰もが驚愕するリザルトだったに違いない。
















































































