“少年時代の夢”を叶えるために930ターボを大改造
1970年代のモータースポーツを代表する「スーパーシルエット・グループ5」。そのなかでも伝説的に語り継がれているのが、ポルシェが生んだ空力マシン「935/78 モビー ディック」です。埼玉県でクルマ店を営む松本幸久さん(52歳)は、少年時代に憧れたこのマシンを自らの手で再現しました。ベースは1989年式ポルシェ930ターボ。FRPで型を起こし、エンジンも耐久仕様に仕上げた“公道を走れるモビー・ディック”です。
スーパーシルエットが生んだ衝撃のエアロダイナミクスカー
昭和40年代生まれのモータースポーツ好きにとって、懐かしさを感じる歴史上のレースマシンは数多く存在する。そのなかでもとくに印象深く記憶に残るモデルは「スーパーシルエット・グループ5」であり、この名を聞くだけで興奮を覚える者は多いことだろう。
スーパーシルエット・グループ5は、1970年代に開催された特殊プロダクションカーによるレースである。量産乗用車の基本設計を基に輪郭のみを残し、トレッドの拡大やオーバーフェンダー、ウイングなどは形状や材質も自由とされた。その衝撃的なスタイリングは、我々の目を釘づけにし、多くのファンを虜にした。
スーパーシルエット・グループ5は、当時のモータースポーツにおける花形的なレースカテゴリーであったため、各自動車メーカーも力を注ぎ、独創的なレーシングカーを続々と投入した。
当時の衝撃的なマシンのなかで、誰もが驚嘆したモデルが、ポルシェがレースに勝つために生み出したエアロダイナミクスカーの「935/78モビー・ディック」である。フラットノーズの伸びやかなスタイルは、欧州耐久シリーズ、とくにル・マンの長い直線において最高速を稼ぎ出すために進化させたボディであると言われている。
エアロダイナミクスを追求して前後に長く伸びたボディ形状は、まるで鯨のようなフォルムに見えたことから〝モビー ディック〟と呼ばれるようになった。このマシンは、現在でもポルシェ911シリーズの頂点に君臨する特別なモデルである。ポルシェ935/78モビー ディックの誕生によって、後のグループCカーというカテゴリーが生まれたとも言われる。
そのポルシェ935/78モビー ディックによく似たマシンを巧みに操り、サーキットランを楽しむオーナーを発見した。まさかと思える光景だが、そのマシンはレーシングカーならではの良い排気サウンドを奏でながら、遠慮なく豪快に攻め込んでいた。
走行を終えてマシンから降りてきたオーナーは、現在52歳のモータースポーツ好きである松本幸久さんであった。松本さんは埼玉県で松本商会というクルマ店を経営している。昔からレースにも参戦しており、その腕前は折り紙つきである。さらに、チューニング好きであり、これまでにさまざまなレースマシンを製作してきた実績を持っていた。








































































