トヨタが負けた全方位戦略に転換した中国メーカーの底力
ASEAN最大の自動車生産国でタイで開催された「バンコク国際モーターショー」。昨年2024年はタイのBEV推進政策に対応することもあり、中国の自動車メーカーが電気自動車を一挙に展示しました。しかし、世界的にBEV市場に向かい風が吹き始めた昨今の状況もあり、2025年はPHEVやICE(内燃機関)のクルマが数多く展示されていました。そのようなアジアの自動車マーケットの状況を、展示車両の動向などから解説します。
2024年は電気自動車ばかりが展示されていた
世界の自動車シーンは、数年前までバッテリーEV(BEV)一辺倒の熱狂に包まれていました。しかし、ここにきてようやく「BEVが唯一の正解ではない」という冷静な世論、つまり「マルチパスウェイ(全方位戦略)」の重要性が認識され始めています。BEVの航続距離の不安、充電インフラの課題、そして何より各国・地域の電力事情やユーザーニーズの多様性を踏まえれば、これは極めて自然な流れと言えると思います。
一方で東南アジアの電動化市場は、その構造がちょっと異なっています。EVの巨大拠点である中国が、圧倒的な価格競争力と供給力をもってBEV市場を急速に拡大させてきました。その勢いはアジア地域にもおよび、2024年に開催された「バンコク国際モーターショー」では多数のEVメーカーが参加し、モーターショーの様相をガラリと変えたのでした。
展示だけではなく車両の予約販売も同時に行うバンコク国際モーターショー
バンコク国際モーターショーは日本などの見せることが主流のイベントと異なり、車両の展示即売会の場でもあるのが特徴です。
2024年の新車予約台数を見ると、不動の首位であるトヨタが8297台でトップを維持し、ホンダも5081台で3位と、日系ブランドの強さがまだ残っていました。しかし、2位のBYDは6917台と肉薄し、AION(広州汽車グループ)、MG(上海汽車グループ)といった中国系EVメーカーがトップ10に大量に食い込んできたのです。
このときの中国メーカーの戦略は、まさにBEV一本槍の攻勢でした。タイ政府の優遇策を背景に、BEVへの移行を強く推し進める姿勢が明確でした。優遇税制、EV補助金などによって、ハイブリッドを含む乗用車とほぼ変わらない価格感でBEVが購入できる。そんな状況が形成されていたのです。
ICE(内燃機関の乗用車)を一足飛びに越えて、EVを購入する。そんな事例も少なくなかったようです。もうひとつは、富裕層のセカンドカー、サードカーとしてのEV。EV攻勢のダイナミックなスピード感は、日系メーカーにとっては大きな脅威を予感させる年でした。




































































































