父親のカーライフを追体験するためあえて同じ仕様にレストア
子供の頃に父親が乗っていたクルマを、大人になって手に入れる。そんな夢を叶えた人がいます。千葉県で行われたイベントに姿を見せたスバル「ff-1 1300G」オーナーの久保さんです。子どもの頃に聞いたエンジン音やクルマから見た景色をもう1度味わいたいと、あえて父の愛車と同じ仕様にレストアしたそうです。記憶をたどるようにハンドルを握る姿に、クルマがつなぐ“時間の継承”を感じました。
雨降る会場で発見した極上ボディのff-1
今回のサクラオートヒストリーフォーラムでは、さまざまなビンテージスバル車の特別展示が行なわれた。これらのクルマは、一般の会場よりも一段高い本部脇の位置に展示。そのなかから発見したのが、このスバルff-1である。雨に濡れたボディにサビはひとつもなく、コンディションは非常に良いようだ。オーナーの久保さんは、このクルマに21年も乗るベテラン。入手するまでの経緯を伺った。
「じつは父親もスバリストで、子どもの頃に私の家のマイカーは1969年式のff-1スーパーツーリングでした。7年ほど乗り色々な箇所が壊れて手放したのですが、父が『いいクルマだった』と手放した後も言っていたのが、子ども心に強く記憶に残っている。そういう経緯もあり21年前に、この1971年式のff-1 1300Gを手に入れた。自分にとってはこれが初の旧車であり、今までずっと乗り続けている」
今でも続く水平対向エンジンのルーツとなったモデル
軽自動車のスバル360で成功を収めていた富士重工が、1000ccクラスの小型乗用車として1966年に登場させたのがスバル1000である。スバル1000は1969年に排気量を拡大し、1100ccとなったff-1へとモデルチェンジした。さらに1970年には、排気量を1267ccまで拡大した最終発展モデルのff-1 1300Gを追加した。
水平対向4気筒エンジンをフロントに縦置きに搭載し、前輪を駆動するFF方式を採用した。ff-1は現在まで続くスバルの伝統的なシンメトリカルレイアウトの礎となったモデルである。
また、バネ下重量軽減のため、ブレーキを等速ジョイントの内側、すなわちトランスミッション脇に設置するインボードブレーキを採用。当時としては珍しい四輪独立懸架とするなど、新機構を積極的に採用している。
久保さんの所有するクルマは、ちょうど後継車種のレオーネが登場した1971年式のff-1 1300Gである。じつは1971年式はよりモダンなラジエターグリルや大きなヘッドライトベゼル、大型テールライトなどを持つ仕様だ。それにもかかわらず、この個体はff-1デビュー当初の外装ディテールを持っている。その理由を次に紹介する。
12年前のレストアで父の乗っていた1969年式「1100」を再現
「じつは今から12年くらい前にレストアした際に、父親が乗っていた1969年式のff-1スーパーツーリングに外装の雰囲気を寄せたんです。部品は先輩から1100モデルの外装一式を譲り受けてそれを使ってます。さらに助手席側サイドシルを通る1本出しの1100用と左右のサイドシルを通るツインキャブの1300用ではかなり排気音も違うため、あえて1100用のマフラーに交換してあります。こうすることで運転席に座って窓から見える景色や排気音は子供の頃に記憶しているものそのものとなりました」
久保さんは、こうして子どもの頃の記憶をこのクルマで再現している。これまで大きなトラブルはないという。気になるパーツの供給状況を尋ねると、あまり流通はしていないというが、デッドストックをこまめに収集し、部品取り車も確保した。今後しばらくは安心して乗ることができる状態だ。
























































