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技術者オーナーが40年間・45万km連れそう愛車ホンダ「バラードスポーツ CR-X」に投入した自身が開発した有名金属加工技術

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TEXT: 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)  PHOTO: 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)

  • ホンダ バラードスポーツCR-X:初期型のバラードスポーツはパワステが付いていない。そのため、機械式2WAYの無限製LSDを装備している愛車は、物凄いジャジャ馬的なハンドリングとなっている
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:1985年1月にバラードスポーツの新車を買い、40年間にわたって愛用してきた“デヴィ♪テキ~ラ♪ピロシキさん”。クルマはなくてはならない生活の一部である
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:エアクリーナーケース吸入口は限界まで開げられている(面積拡大)。その上流に、径と長さを計算してトルクの谷を埋める無限で製作したファンネルを装着している
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:サスペンションは前後ともエナペタルのワンオフ車高調。オーバーホール対応仕様である。現在、オーリンズのショックをオーバーホール中である
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:ワンオフのステンレス製エキパイと1本出しサイレンサーを装備している。つなぎは差し込み式だ。触媒はDC2型インテグラ タイプR用である
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:すべてのウィンドウに紫外線100%カットのKOBOtectフィルムを貼っている。アルミホイールはRSワタナベの2ピースである
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:フロントブレーキのキャリパーとマスターバックはEF3型グランドシビック用である。ブレーキパッドはAPロッキードだ。リアブレーキのドラムは初代インサイトのアルフィンドラムである
  • ホンダ バラードスポーツCR-X:タイヤはTOYO PROXES R1Rである。佇まいがカッコよくなるようにワンオフ10mm厚ジュラ鍛ホイールスペーサを入れている。ヘッドライトはHID化している
  • 40年間所有しているホンダ CR-X

新車デビュー時に訪れた販売店でひと目惚れ

栃木県で定期開催されているクルマ好きの交流イベント「Free Motor Meeting(FMM)」に、40年間・45万km乗り続けているホンダ「CR-X Si」オーナーが参加していました。そのオーナーはなんと、金属表面処理「MD処理」の発明者でした。自ら開発した技術を愛車に施しながら歩んできた、その情熱とチューニングのこだわりを取材しました。

実車を見たら新聞広告からの印象が180度転換

オーナーの“デヴィ♪テキ~ラ♪ピロシキ”さんの愛車、ホンダ バラードスポーツ CR-X Siは1985年1月に新車で購入。2025年で所有歴40年を迎えた。

新車発売時の新聞広告を見たときは「寸詰まりなスタイルだ」と思ったが、実車を見てひと目惚れ。直線的なボディデザイン、4バルブDOHCエンジン、そしてバンド活動で音楽機材を運ぶ際にとくに重宝する荷物の積載性の高さが気に入っている点である。

オーナーによると、最初の20年間は通勤に使用し、その後の20年間は週末のドライブを楽しむ際の相棒として乗り続けてきた。

走行距離が約29万kmに達した時点で1度エンジンをオーバーホール。エンジンとトランスミッションの摺動部には、WPC処理とMD処理を実施している。このときのボディ以外の各部のレストアは大規模であり、2005年までの3年7カ月を費やしたそうだ。現在の走行距離は45万kmオーバーとなっている。

“デヴィ♪テキ~ラ♪ピロシキ”さんは

「どういうわけかハチロクとよく間違えられるんですよね」

じつは“デヴィ♪テキ~ラ♪ピロシキ”さんはMD処理の発明者であり、二硫化モリブデンショット処理も発明したそうだ。自ら開発した摺動部に対する表面処理を試せる点が、クルマならではの楽しさであるという。

※WPC処理・MD処理・二硫化モリブデンショット処理:噴射する物質は異なるが基本的に処理対象表面に高速噴射し、衝突させることで処理対象の最表面の強度やディンプル(油溜まり)、層を形成することで、金属パーツに対しては潤滑・摩耗などの性能を高める

オタクすぎる使用する油脂類の選択と添加剤のブレンド

オーナーに、愛車に施した具体的なチューニングメニューを詳細に聞いた。

エンジンオイルはF1用と添加剤3種を長らく使用してきたが、最近はENEOSサスティナの5W-30エンジンオイルに岐阜にある平瀬鉱山産出の世界一純度が高い二硫化モリブデンを入れている。

「サスティナのZPテクノロジーはナイスですね」

ミッションオイルもF1用と添加剤2種で、クーラントはレース用と添加剤を使用している。

排気系では、ステンレス製タコ足に耐熱性に優れたジルコテック処理を施している。点火系を16V昇圧化と安定化電源とし、以下の作業を実施している。

・ピストン冠面鏡面加工
・ヘッド面研、バルブ摺り合わせ(鏡面加工済)
・In/Exポート修正
・カム位相ズラし
・コンロッドのMD処理
・フライホイール軽量化、クランクジャーナル鏡面仕上げ
・無限ECUリセッティング
・シリンダボアボーリングによる0.5mmオーバーサイズピストンの導入

今後の展望として、足まわりのリセッティング、ボディのレストア、シルエットの無限化を予定している。また、ミッションにDLC(プラズマCVDのa-C:H:Si DLC)を成膜し、クランクシャフトメインジャーナルにa-C:H:Si DLCコーディングを施すことを目指している。

リアシートと内装を外しているのは軽量化と思いきや……

リアシートまで取り外され、内装がほぼない状態であったため、軽量化を目的とする走り屋のクルマと思われるが、実際は異なる。

雨漏り箇所の特定を続けた結果、内装のほとんどを取り外すことになった。元に戻すのが面倒であるため、そのままにしている状態だ。過去には初代シビックRSなどを愛車としてきたが、現在は2022年に友人から譲り受けたトヨタ「プリウス(2013年式)」も所有している。この3代目プリウスを、バラードスポーツCR-X Siに何かあった際の移動手段として活用している。

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  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 本業はフリーランスのライター兼エディター。1998年に買ったアルファ ロメオGT1600ジュニア(通称:水色号)を現在も愛用しており、すでに総走行距離が30万8000kmオーバーとなっている(2022年4月中旬現在)。クラシックカーラリーに水色号で参戦取材することがライフワーク(?)となっており、群馬をホームタウンとして開催されている「スプレンドーレ」では、柴犬を“ワン・コドライバー”、秋田犬を総監督として挑んでいる。全国各地に水色号でお邪魔しているので、これからも走行距離が順調に伸びる予定。
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