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解体される運命だったテストカーが現存!20台しか作られなかったランチア「デルタHFインテグラーレ ムレット ストラダーレ」が約2670万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

テスト走行で使用する装備はそのままの元ワークスカー

今回のオークション出品車である1992年式ランチア デルタHFインテグラーレ「ムレット ストラダーレ」は、ランチアがWRC選手権を制した1992年シーズンに、ディディエ・オリオールのテストプログラムに直接関与した、歴史的に重要な元ワークス車両である。

当時のアバルトは、公道走行が許されるグループN車両をベースに、外装ではクイックリリース式のボンネット/トランク留め具、競技仕様の補助フロントライトポッド、専用設計の燃料タンクに付属するラリースタイル燃料給油口を移設した。そのほか、ホワイトの17インチ径スピードライン社製アロイホイール、ヨコハマ「スポルティーボ」タイヤなどが目立つ。ボディカラーは「モンツァレッド」に黄/青のHFストライプが組み合わされる。

一方、ドアパネルにオリジナル保護プラスチックカバーまで残存しているインテリアは、同時代のグループA車両に準拠したネロ(ブラック)の不燃性ファブリック張りである。アバルト製2本スポークステアリングホイールや室内側バッテリーキルスイッチ、SPARCO社製「キングドラゴン」バケットシート、FIA規格のフルロールケージと消火器、ケブラー製のフットウェル保護プレート、そしてデジタル式ラリーコンピューターなど、ラリーのレッキ試走に必要な装備を満載している。

また、グループNの規約に応じてスタンダードと同じ205psスペック4気筒DOHC16Vターボエンジンを搭載し、「エヴォI」純正のトランスミッション&ドライブトレインを組み合わせる一方で、ブレーキはラリー仕様の強化型とされた。そのほか、ストラットブレースや調整式ダンパー付きコイルオーバーサスペンションを装着するなど、足まわりは大幅にアップグレードされている。

近年には、2万1000ユーロ以上を投じた大規模かつ高度な機械的修復が実施され、関連するすべての請求書と書類が保管されている。オリジナルのイタリア国内登録プレート「TO 40747S」を保持しており、1992年のテストプログラム中に走行している写真も添付される。

さらには、前述した「ランチア・クラシケ」発行のドキュメント類に加え、純正イタリア登録ナンバープレート(TO40747S)、ドイツ登録書類、FIAパスポート、PRA書類(イタリア自動車クラブ)、TÜV検査報告書、当時の写真も付属する。

エスティメート下限をわずかに下まわる価格で落札

今回のオークションに出品されたランチア デルタHFインテグラーレ「ムレット ストラダーレ」について、ボナムズ社では

「モンツァレッドのボディにネロのインテリアを組み合わせたこのクルマは、ランチアのWRC黄金時代へと繋がるかけがえのない絆を体現する、真のコレクターズアイテム」

と、歴史的な価値を高らかにアピールしつつ、16万ユーロ~20万ユーロ(邦貨換算約2848万円〜3560万円)という、このレアな来歴に自信を得たかと思われるエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。

ところが、2025年10月12日に行われた競売ではビッド(入札)がイマイチ伸びなかったようで、オークショネア側に支払われるプレミアム(手数料)を含めてもエスティメート下限をちょっと割り込む14万9500ユーロ、現在のレートで日本円に換算すれば約2670万円で落札されることになった。グループAワークスカーよりも安価ながら、スタンダードのエヴォIよりも遥かに高額となった最終的な価格は、やはりディディエ・オリオールが走らせた歴史の賜物と思われるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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