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趣味濃度の高いクルマを乗り継いできたオーナーが選んだザガートの美学が宿るランチア「フルビア スポルト」

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循(NAGAO Jun)

  • ランチア フルビア スポルト ザガート:2024年の秋に購入した
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:インテリアに上品さがうかがえるウッドステアリング
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:1.3L 狭角V型4気筒エンジンを縦置き搭載。前輪駆動だ
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:ランチアのノーブルなイメージとザガートの筋肉質でアグレッシブなデザインが見事にバランスしている
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:イタリア車に強いスペシャル・ショップで出会った現愛車
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:インパネまわりはシンプルなデザインを採用
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:リアパネルには車名のエンブレムを装着
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:LANCAの文字もデザインされていた
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:ミラーは小ぶりなタイプが装着されている
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:ホイールはクロモドラCD28
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:フロントノーズにも車名のエンブレムを装着
  • ランチア フルビア スポルト ザガート:カロッツェリア・ザガートがデザインしたボディを纏った
  • ランチア フルビア スポルト ザガート

ザガートのノーブルかつアグレッシブなデザイン

2025年9月に開催された新潟県糸魚川市フォッサマグナミュージアムの敷地内で開催された「日本海クラシックレビュー」。このイベントには毎回国産・輸入車を問わず数多くの参加車両が集まりますが、今回ご紹介するのはそのなかでは唯一となるランチア「フルビア スポルト ザガート」とそのオーナーです。

進歩的な技術で自動車史を彩った名門ランチアの功績

欧州市場でイプシロンが孤軍奮闘しているランチア。残念ながら現在の日本で「ランチアの新車」に乗ることはなかなかハードルが高い。しかし、旧くからのクルマ好きにしてみれば、長い歴史に裏打ちされた上質で進歩的な歴代のランチア車は、いまなお尊敬に値する名門ブランドであることに変わりない。ラムダ、アプリリア、アウレリア、アッピアといった歴代ランチアは、前輪独立懸架、フルモノコック・ボディ、市販ロードカー初のV6エンジン、ほかにほとんど例を見ない狭角V4エンジン、4輪ディスクブレーキなどを時流に先駆け採用した。多くのエポックメイキングなモデルを産んだ自動車史を語る上で欠かせない存在だ。

ランチアのラリーイメージを確立した「フルビア」

またミッレ・ミリアに代表されるロードレース、後年「ランチア・フェラーリ」として成功を収めるF1マシーン、ランチアD50など、古くからモータースポーツの分野でも活躍してきたランチアだが、ストラトスや037ラリー、そして1987年から1992年にかけて6度のマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得したGr.Aデルタなど、近年のラリー・フィールドでの活躍は記憶に新しい。そんな「ラリーと言えばランチア」というイメージを強く印象付けたのが、それらのご先祖に当たるフルビアであろう。

ランチアの小型セダンとして1963年に生まれたフルビアは、1965年には2ドア・クーペをバリエーションに追加した。このフルビア クーペの高性能仕様であるHFが1972年のラリー年間王者に輝く活躍を見せるのだが、フルビアにはさらにもうひとつの派生モデルが存在する。それがイベント会場で出会ったフルビア スポルト ザガートだ。

これはその名のとおりカロッツェリア・ザガートがデザインしたボディを纏ったモデルである。ザガートといえば好き嫌いの分かれる攻めたデザインというイメージが強いが、このフルビア スポルト ザガートは、ランチアのノーブルなイメージとザガートの筋肉質でアグレッシブなデザインが見事にバランスしている非常に好ましいクルマだ。

購入の決め手はザガートのデザインとラリーヒストリー

「ちょうど1年前、去年(2024年)の秋に手に入れたばかりなんです」

と語るのは、このイベントに神奈川県から参加したオーナーの渡辺高司さんである。大学時代には自動車部に所属するなど、昔からクルマ好きだったという渡辺さんは、今までにもローバー「ミニ」やアルファ ロメオ「156」、「159」など趣味濃度の高いクルマを乗り継いできたそうだ。

「仕事や子育ても一段落したので、改めて1960年代のヒストリックカーに乗りたいな、と思いまして」

アルファ ロメオ「ジュニア ザガート」や、オースチン「ヒーレー スプライトMk.1」なども購入の候補に上がっていたそうだが、最終的にはイタリア車に強いスペシャル・ショップで出会ったこの1972年式フルビア スポルト ザガートを伴侶とすることに決めた。

「ほかにないザガートのデザインに加え、ラリーで数々の栄冠に輝いたブランド、というヒストリーも購入の決め手になりました」

今後もヒストリックカー・イベントには積極的に参加していきたいという渡辺さん。

「東京近郊、関東圏のイベントには色々行ってみたいですね。少し前には伊香保のイベントにも行きましたよ」

と笑顔を見せた。これからも全国各地で白いフルビア スポルト ザガートを見かける機会が増えそうだ。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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