ポルシェの歴史的傑作「ナナサンカレラ」のプロトタイプ車両がオークションに出品
2026年1月23日、アメリカ・アリゾナ州で開催されたRMサザビーズのオークションに、1台の黄色いポルシェ911が登場しました。一見すると、かつて流行した「カレラRS風」のカスタム車両のようにも見えますが、その正体はポルシェの歴史を語るうえで欠かせない、きわめて重要な開発車両(プロトタイプ)でした。のちに「ナナサンカレラ」として神格化されるカレラRS2.7。その誕生の裏側にあった、エンジニアたちの執念と驚きの履歴を紐解きます。
ポルシェ初のRS車両開発のために作られた試作車が市販されていた?
現在におけるカルト的人気と飽くなき需要を考えると想像しがたいが、ポルシェ911のなかでももっとも影響力のあるモデルのひとつである「ナナサンカレラ」こと「カレラRS2.7」は、誕生間際で危うく頓挫する可能性があった。
1970年代初頭にプロジェクトが起案された際、ポルシェ社内のマーケティング部門は、徹底的に装備を簡素化し当時のどの911よりも高価な値付けとなる911最上位となる軽量モデルのビジネスが成功するという確信を持ててはいなかった。しかし、ヴァイザッハのエンジニア陣が主張をとおし、競技用ホモロゲーション取得を目的とした、サーキット指向の量産モデル開発まで漕ぎ着けたのである。今回「ARIZONA 2026」オークションに出品されたポルシェ911こそ、当時のヴァイザッハのエンジニアたちの努力の証となる「伝説のナナサンカレラ」の原点となる開発車両だったのである。
911カレラRS2.7は当初、単に「911S-2.7」として計画されていた。新開発の2.7L水平対向6気筒エンジンにボッシュ製機械式燃料噴射装置Kジェトロニックを搭載する仕様だ。「911S-2.4」との差別化、およびサーキット指向のエンジニアリングを強調するため、ポルシェはのちに「レンシュポルト(Rennsport=レーシングスポーツ)」を意味する「RS」の称号を付与した。
鮮やかなカラーリングのこのEシリーズ911クーペ(シャーシNo.9112301609)は、ヴァイザッハのポルシェ本社開発部門で使用され、「RS」名が制定される直前に試作されたもの。このため、この車両は「911S-2.7」モデルの初期計画に対応する存在であり、911カレラRS開発において極めて重要でありながら見過ごされがちな時代を体現している。
この個体は当初、市販向けの「911S-2.4」として製造工程が開始された。わずか1年間のみ生産された、通常燃料給油口がある位置にオイル給油口を備えていた、いわゆる「オイルフラップ」モデルである。1972年6月20日付のオリジナル車両注文書の写しによれば、ポルシェの「スペシャルウィッシュ」カスタマイズプログラムを通じて、実験的な「蛍光イエロー」塗装が指定されていた。また、2.4Lエンジン(エンジンNo.6322388)、「パールコード」仕様のブラックレザレット(ビニールレザー)内装、運転席側ドアミラーが装備されていたようだ。
ところが、ポルシェ開発部門は同じ1972年6月、ヴァイザッハでのテスト用にこの車両をピックアップして、プロトタイプの2.7L水平対向6気筒エンジン(No.6630027)を搭載することにした。
また、のちにカレラRS2.7となるモデル向けにポルシェが開発し、現在では象徴的な特徴である「ダックテール」スポイラーも装着されたほか、ダッシュボード下部のパネルには、電流計と油圧計、油温計に加え、テスト走行中の通信用ラジオなど、様々な追加計器が収められることになった。






























































































































































