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驚愕の1億円超えで落札!「ナナサンカレラ」の試作車が放つオーラ

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2026 Courtesy of RM Sotheby's

ラインから出てきた2.4Sを軽量化し、210馬力の2.7リッター試作エンジンを搭載した実験車両

1973年9月、ポルシェ開発部門による技術開発プロセスが終了したあと、この911カレラRS2.7テスト車両は、シュトゥットガルト郊外の地方都市ネッカーズルムに在住するフランツ・ズスナー氏に売却された。

ポルシェ開発部門責任者ヘルムート・ボットもネッカーズルム在住であり、同じくエンジニアであるズスナーは彼と親交があったと伝えられている。当時、いわゆる「プレシリーズ」車両を縁故のある一般消費者に販売することは珍しくもない慣行であり、ズスナーはボットとの繋がりを活かして、ポルシェAGから直接このテスト車両を中古車として入手したと推測される。

1973年9月17日付のポルシェ社からの書簡により、シャーシNo.9112301609にはその時点まで車両登録が発行された事実がなく、実際に試験目的のみに使用されていたことが確認されている。

同様に搭載されていた2.7Lのフラット6(No.6630027)も試験用であり、公式名称「911 SC-F」が与えられていた。書簡に記載されたエンジンの仕様は「210ps、排気量2687cc、最高速度149mph」と記されている。

ポルシェのエンジン番号体系に関する一般的な理解によれば、エンジンNo.6630027は当該タイプの最初の30台以内に位置するもので、量産型RS2.7モデルに割り当てられることのなかった、2.7Lの試作エンジン群の分類番号に含まれている。

フランツ・ズスナーは、購入直後から数年間をアルジェリアで過ごすことになり、ほどなくこの911もアルジェへ輸送。1976年までアルジェリアの特別観光許可証で運転していたという。ポルシェのヴァイサッハ技術陣は北アフリカでのテスト走行中、彼のパームビーチ別邸を数度訪問したと伝えられる。この時期に撮られた車両写真は、同車に付属する詳細な履歴ファイルに収められている。

話は前後するが、まだドイツ統一前の西ドイツ時代となる1973年9月18日、この個体はズスナーの名義により公道使用登録が初めて行われている。登録免除文書の写しには、RSプロトタイプのリアスポイラーと蛍光黄色塗装(この目立つ色は公用車のみに許可されていた)について、シュトゥットガルト地方議会による特別許可が示されている。

ところがこの特例は1977年3月に失効した。そこでズスナーは車両を赤色にリペイントし、ボッシュ製ドライビングライトを装着。特徴であったダックテールスポイラーも、のちのカレラやターボに採用された「ホエールテール」デザインのものへと交換し、オリジナルのプロトタイプスポイラーは保管することにした。

そして、ズスナーはこの歴史遺産を43年間もの長きにわたって所有し続け、2016年に現在のオーナーに譲渡したとのことである。

生来の姿に戻されオークションに登場

今回のオークション出品者でもある現オーナーは、ポルシェの聖地シュトゥットガルト在住のポルシェコレクター。それゆえに、この個体の歴史的重要性を深く理解しており、ドイツの専門家チームに依頼し、開発直後の状態へと細心の注意を払って復元させた。

アイコニックにして鮮やかなイエロー塗装、オリジナルのダックテールスポイラー、サイドの「Carrera」レター、ダッシュボード下のプレシリーズ用メーター類などは、まさしく歴史的な写真に写る姿そのものと言えよう。

ただし、ダックテールスポイラーの下には量産仕様の「Carrera RS」デカールが追加されてはいるものの、当時の写真で試作車として使用されていた当時から、この特徴的デカールがあったか否かは不明である。

いっぽうメカニカルパートについては、シュトゥットガルト北郊の街ヴィネンデンのレーシングチーム兼ポルシェチューニングショップ「カダッハ」社が2.7Lエンジンをリビルドし、ボッシュ社製のKジェトロニック燃料噴射装置は専門業者に委託してオーバーホールされた。保存状態が良く、所有歴も明確に記録されているこの傑出した911は、その魅力的な歴史を裏付ける詳細な履歴ファイルとともに提供される。

RMサザビーズ北米本社では「ブランド愛好家や歴史家にとって非常に魅力的なこの車両は、カレラRS2.7の開発史における重要でありながら広く知られていない一章を体現しており、モデル名すら完全に決定されておらず、そこからポルシェが新コンセプト車両を立ち上げた歴史的な語り部と言えるでしょう」という歴史的価値をアピールする文言とともに、70万ドル〜90万ドル(邦貨換算約1億1130万円〜1億4310万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。

ところが、1月23日に迎えた競売では売り手側が設定したリザーブ(最低落札価格)には届かなかったようで、残念ながら流札。現在では72万5000ドル、最新の為替レートで日本円に換算すれば約1億1300万円で継続販売とされているようだ。

※為替レートは1ドル=159円(2026年1月23日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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