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当時の先端技術が注がれた1972年式マセラティ「ボーラ」の落札価格に吹いたアドリア海の北東風!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of Broad Arrow  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

生産数289台と希少性高いボーラだが、ライバルに比べ約2000万円とかなりリーズナブルな価格

このほどブロードアローのアメリア・アイランド2026オークションに出品されたマセラティ ボーラは、1972年3月にモデナ市内のチーロ・メノッティ本社工場で組み立てられた生産最初期の個体だ。ファーストオーナーの意向により、スポーティで洗練された「チェレステ・キアーロ(ライトブルー)」のボディカラーとブラックレザー内装の組み合わせで、新車としてオーダーされたものである。

4基のツインチョーク式ウェーバー42DCNFキャブレターを組み合わせ、最高出力310psを発生する4700ccのV8エンジンを搭載し、わずか289台しか生産されなかった希少なモデルだ。「マセラティ・クラシケ」のヒストリアン、ファビオ・コリーナ氏が指摘したように、この車両はZF製5速マニュアルトランスミッションを搭載し、メートル法の計器類と、欧州マーケット向けのスマートなクロームバンパーを装備して、イタリア国内にて登録・納車された。

その後、紆余曲折を経てアメリカへやってきたこの個体は、2015年までにフロリダ州マイアミのコレクターによって購入され、大規模なレストア作業が依頼される。ボディワークから始め、チェレステ・キアーロのオリジナルカラーで再塗装。インテリアはシートとドアパネルに新しいブラックレザーが採用され、新しいヘッドライナーとカーペットも取り付けられた。これまでの調査によると、外観の修復が完了したあと、エンジンとブレーキシステムもオーバーホールされたようだ。

レストア作業が完了したのち、この流麗なマセラティは2022年8月に現オーナーによって購入される。2023年8月には、サンタ・クルーズの専門ファクトリーにおいて燃料系と点火系、冷却システムに焦点を当てた大規模な作業が実施され、総額1万8271ドル(約290万円)を要したという。くわえて、直近の2025年6月にも追加の再調整が行われ、総額4880ドル(約77万円)に相当する作業が完了した。

今回のオークションに向けてブロードアロー社が製作した公式カタログでは、

「ジウジアーロのデザインによるシンプルでありながら優雅な特徴をいまなお保持し、希少な高級色“チェレステ・キアーロ”で新車仕様どおりに仕上げられたこのボーラは、モデナを離れた時から愛好家を魅了し続けています」

というPR文を添え、14万ドル~16万ドル(邦貨換算約2226万円〜2544万円)という、このモデルの現在における相場感を反映したエスティメート(推定落札価格)を設定。そのうえで「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。

そして3月7日に行われた競売では、終わってみれば12万8000ドル。つまり、現在の為替レートで日本円に換算すれば約2035万円という、現在の市場におけるカウンタックはもちろん、フェラーリ BBの相場よりもかなり安価であり、落札者にとってはなかなかリーズナブルな価格で競売人のハンマーが鳴らされるに至った。

ただ、オークションのカタログ写真を精査してみると、例えばマフラーのサビやステンレスパーツの擦り傷などが垣間見られるなど、この個体のコンディションが少々忌避された可能性も否めない。すなわち、今回のハンマープライスがボーラ全体の相場感を示しているとは一概に言えないが、どこかマセラティ「ボーラ」の名前の由来のように、アドリア海に吹き降ろす冷たく力強い北東風(Bora)が吹いたように感じられて切ない。

※為替レートは1ドル=159円(2026年4月13日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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