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「封かん競売」が守る超富裕層のプライバシー!? シンガーDLSターボ「セパン・コミッション」取引から読み解く、現代コレクターズカー市場の極秘裏な深層

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2026 Courtesy of RM Sotheby's  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

99台限定の空力追求カーボンボディと究極の意匠をまとった「ザ・セパン・コミッション」に宿るシンガーの美学

センセーショナルなカーボンファイバー製ボディワークは、計算流体力学解析を用いて丹念に設計され、空力性能を最適化している。ボディワークこそが真のパーソナライゼーションの始まりだ。オーナーは大型のリアウィングとよりアグレッシブなフロントフェイシアを備えたサーキット志向の仕様か、あるいはリアのダックテールスポイラーとより大人しいフロントフェイシアを備えたロード志向の仕様のいずれかを選択できる。

さらに、注文主は究極の選択の自由を実現するために、両方のセットアップを指定し、特注のフライトケースに収納することも可能だ。「ザ セパン コミッション」のように、使用目的に合わせて愛車を変身させられるという。

「Sealed – The Singer Drop」に出品されたのは、名づけて「ザ セパン コミッション」。わずか99台が限定生産されるDLSターボのレストア車両のひとつである。

初代オーナーのコレクターは、シンガー ヴィークル デザイン社に複数のレストアを依頼してきた人物だ。「すべてが重要(Everything is Important)」というシンガーのモットーを体現する1台を追求するため、費用を惜しまなかったという。

「セパン コミッション」は、サンプルカラーから選択した「ウルフ ブルー」で塗装されている。そのボディカラーを引き立てるため、ダークブルーに着色されたカーボンファイバーパーツが随所に採用された。

また、シャンパン色に陽極酸化処理を施したアルミパーツが磨き上げられ、アクセントとなっている。この仕上げは「ターボファン」スタイルのマグネシウム合金ホイールにも引き継がれた。さらにリアデッキリッドのバッジには、無垢の真鍮が使用されている。

いっぽう、インテリアはボーンレザーで仕上げられた。外装と同じくシャンパン色に陽極酸化処理を施したアルミパーツをあしらっている。車両全体の外観を統一するために、ダークブルーに染め上げられた光沢のあるカーボンも随所に採用されている。

 

ツーリングシートは、中央部にボーン アルカンターラのパーフォレーション加工を施している。シートバックは柔らかなボーンレザーでトリムされ、ヘッドレストには「DLST」のエンボス加工が施された。ステアリングホイールの外周部はボディワークに合わせてアルカンターラでトリムされ、内周部はボーンレザーで仕上げられている。

「秘密の競売」と「5億円超?」という結果すら明かされないシンガーDLSターボの転売に見る、超富裕層市場の驚愕舞台裏

セパン コミッションには、サーキット仕様および公道仕様の両方のリアデッキリッドおよびフロントフェイシアに加え、クリアレンズのコーナーライトが追加で装備されている。新しいオーナーはニーズに応じて自由に仕様を構成することができるのだ。

今回のオークションに際しては、レストア直後の状態にまで戻したうえで納車される。その前にはシンガー社による慣らし走行が必ず行われるという。

RMサザビーズは自社の公式カタログ内で、以下のようにアピールしている。「シンガーによって再構築されたタイプ964のポルシェ 911のなかでも、間違いなくもっともワイルドです。そしてヴィジュアル的にも圧倒的なバリアントであるDLSターボは、この素晴らしい企業のポテンシャルを示す見事なショーケースと言えます。わずか99台限定のレストア車両の待ち行列を飛び越えて、近年もっとも期待を集めている車両のひとつを手に入れる絶好の機会となります」。

それとともに、入札者が相互に提示価格を知ることができない「シールド ビッド(Sealed Bid:封かん競売)」の形式をとることとした。

そして、オークションの通例であるエスティメート(推定落札価格)は、日本での発表当時に公表されたレストア価格310万ドル(ドナー車両は別途、レーシングタイヤなどのオプションを含む)を凌ぐ金額となった。345万ドル(約5億4510万円)から500万ドル(約7億9000万円)が目安とされていたのだ。

こうして2026年3月18日から25日にかけて、オンラインで秘密裏に競売が行われたはずなのだが、オークションが終了したあとに公式WEBページを見ても、ハンマープライスはもちろん、落札に至ったか否かも公表されていない。

なるほど、さまざまな富裕層ビジネスが台頭する現代においては、こんなオークションもあり得るのか。いささかの嘆息まじりに感心してしまったのである。

雲の上のクルマが、雲の上の取引で主を変えていく。次にこの「ザ セパン コミッション」が公の場に姿を現すのは、はたしていつになるのだろうか。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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