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1910年式ロールス・ロイス「シルバーゴースト」の圧倒的佇まいとジェントルマンオーナー

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循(NAGAO Jun)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:真鍮を多用した美しいフロント周りが、116年前の威厳を今に伝える
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:細部に至るまで妥協のない造り込みが、世界最高と呼ばれる所以だ
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:歴史を刻むプレートが、名門ブランドの揺るぎない誇りを示している
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:アセチレン灯を用いたヘッドライトが、当時のままの姿を残している
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:真鍮製の操作系が並ぶ運転席は、クラフトマンシップの結晶である
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:木製スポークのホイールが、自動車の黎明期の雰囲気を色濃く残す
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:2つの3気筒を並べたような直列6気筒エンジンが静かに鼓動する
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:真鍮のパーツが美しく配置されたエンジンルームはまさに芸術品だ
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:排気量は7428ccに拡大され、当時の最高速度は100km/hを超えた
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:オーナーの和田さんとともに、ヒストリックカー・イベントを楽しむ姿
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:威風堂々とした体躯で会場に鎮座し存在感を放つ
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:現代の街並みを自走で駆け抜ける姿は、多くの人々の目を釘付けにした
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:名車の品格に魅了されたオーナーの心意気が伝わる美しいサイドビュー
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:パレードの先頭を飾る姿は、自動車の歴史遺産と呼ぶにふさわしい
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:品川の近代的なビル群を背景に、116年前の美しいシルエットが映える
  • ロールス・ロイス シルバーゴースト:威風堂々とした体躯で品川駅前広場に鎮座し、圧倒的な存在感を放つ

116年の時を超えて品川を走る名車

2026年4月5日、JR品川駅港南口のふれあい広場で「品川クラシックカーレビュー イン 港南」が開催されました。交通安全に対する意識を啓発するという趣旨のもと、春の全国交通安全週間の時期に行われているイベントです。バラエティに富んだヒストリックカーが集まるなか、ひと際注目を集めていたのが1910年式のロールス・ロイス「40/50HPシルバーゴースト」です。116年前の名車と、その品格に魅了されたオーナーの想いに迫ります。

世界最高のクルマと賞賛された歴史的遺産

このイベントを運営しているのは、かの全日本ダットサン会である。その関係から参加車両は歴代日産車の比率が高いのが特徴だが、もちろん日産車以外の貴重な車両も多く参加する。今回のイベントには42台がエントリーリストに名を連ねたが、それらエントラントのなかでも、その威風堂々たる体躯で会場内でひと際注目を集めていたのがこちらの1台だ。1910年のロールス・ロイス 40/50HPシルバーゴーストである。

英国の裕福な貴族にしてモータリストであったチャールズ・スチュワート・ロールスと、叩き上げの技術者フレデリック・ヘンリー・ロイスが出会い、世界最高のクルマ造りを目指してロールス・ロイスを創業したのは1904年(明治37年)のこと。今なお同社は“The Best Car in the World”を標榜する世界的な高級車メーカーとして知られるが、その評価と名声を決定的なものとしたのがシルバーゴーストなのである。

1906年に40/50HPがデビューした当初、同車にはまだシルバーゴーストという名称が付けられていなかった。しかし、RAC(英国王立自動車クラブ)主催の自動車の耐久性を試す長距離ノンストップ・ラン「2000マイル・スコティッシュ・トライアル」にシルバーのボディカラーで挑んだ40/50HPは、全行程をノントラブルで走破した。次いで挑戦した「ロンドン〜グラスゴー1万5000マイル・ノンストップ・ラン」でも新記録を樹立している。

もともとこの個体に付けられていた愛称がシルバーゴーストだったのだが、その高性能・高品質を証明したエピソード、そして当時の自動車としては考えられないほどの静粛性を誇っていたことから、40/50HPシリーズはこの後正式な車名としてシルバーゴーストを名乗ることとなった。そして40/50HPシルバーゴーストは、当時の高級車としては異例ともいえる約8000台が生産される大きなヒット作となったのである。

ちなみに40/50HPだが、前半の数字は当時の課税馬力(Tax Horsepower)と実効馬力(Actual Horsepower)を表しており、40はイギリス王立自動車クラブ(RAC)が定めた計算式に基づく税金計算用の馬力を表し、50は実際のエンジン出力(ブレーキ馬力)がそのままネーミングとなっている。

116年前の名車を自走で楽しむ愛好家は元ロールス・ロイスクラブ会長

そんな自動車の歴史遺産とも言えるようなシルバーゴーストが、2026年の品川駅前広場にどんと展示されていたのだから、そのインパクトは大きい。こちらの参加車両は1910年式(明治43年)というから、実に116年も前のクルマである。

オーナーの和田篤泰さんは1970年代後半にロールス・ロイスの魅力に取りつかれ、つい数年前までは国内のロールス・ロイスクラブの会長も務めていたという経歴をお持ちの愛好家だ。クルマは走ってこそと、当日もご自宅から会場までごく普通に自走で参加されている行動派である。そんな和田さんに、ロールス・ロイスにのめり込んだきっかけを伺ってみた。

「社会に出てからずっと仕事一筋の人生でした。とにかくがむしゃらに働いてきたのですが、そのなかで『仕事も単にお金儲けだけではなく、他者に対する思いやりというか、品格が大切だ』と考えるようになりました」

人生のそんなタイミングで出会ったのがロールス・ロイスだったという。C.S.ロールスの美的センスと商才、そして一切の妥協を許さないF.H.ロイスの技術者としての矜持。そんなロールス・ロイスの成り立ちが、和田さんの想いにピタリと符合したのではなかろうか。

名車の品格に魅了されたジェントルマンの心意気

「ロールス・ロイスの目指した製品の品質、さらにはその品格に相応しい人格を目指してみようと思ったのです」

そんな経緯から一念発起し、ロールス・ロイスのオーナーとなり、何台ものモデルを乗り継ぐことになった。

「このシルバーゴーストは1980年代に英国から輸入して、それ以来大切に乗り続けています。英国で開催された生誕100周年イベントにも参加しました。一時は何台ものロールス・ロイスを所有していたのですが、体はひとつなので、コレクションはずいぶん整理しました」と語る和田さん。

じつは和田さんとシルバーゴーストとは、今までにも各地のヒストリックカー・イベントでたびたびお会いしてきているのだが、それらは基本的にすべて自走での参加である。何年か前には新潟県糸魚川市のヒストリックカー・イベントでお会いして、驚いた記憶もある。

今回のイベントでも交通安全パレードの先頭車両として、変貌著しい21世紀の品川駅周辺を威風堂々と走行した。その姿はまさに自動車の歴史遺産だ。そしてその威風堂々の存在感に勝るとも劣らないジェントルマン、和田さんの心意気である。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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