完璧なコンディションを保つ最終期クーペモデル「モンディアル3.2」
さきごろアイコニック オークショネア社主催のオークションに出品されたのは、より複雑な縦置きミッドシップレイアウトを持つフェラーリ「モンディアルt」への代替わり直前、最終期に生産されたモンディアル3.2クーペだった。
おなじみ「ロッソ コルサ」のボディカラーに、クレーマ(クリーム色)の英国コノリー社製レザーハイドというクラシックな組み合わせで仕上げられている。3万194マイル(約4万8300km)という年式のわりには少ない走行距離を裏づけるように、エクステリアとインテリアともにほぼ完璧なコンディションを誇っている。
このモンディアル3.2は、イングランドにおける伝説的な元フェラーリ正規代理店であるマラネッロ コンセッショネアーズから、初代オーナーであるマンチェスターのアイフェル ファウンドリー ワークス社所属のA J フレッチャーなる人物に新車として納車された。その後2人の所有者が長期にわたり所蔵したあと、今回のオークション出品者でもある現オーナーの厳選されたコレクションにくわえられたという。
車両に添付されたヒストリーファイルには現オーナーのウォレットが含まれており、正規工場のスタンプが押されたサービスブックやドライバーズマニュアルが収められている。そして、過去50マイル(2023年5月および2025年5月)の間に2回にわたるタイミングベルト交換、および2回の12カ月点検を請け負ったコルチェスター フェラーリ社からの最近の請求書も存在する。くわえて、そのほかの整備内容としては、リアブレーキの分解整備にアンチロールバーのブッシュ交換、およびマフラーブラケットの交換が含まれる。
1992年1月の古い英国MOT車検記録が、オドメーターに表示されている走行距離を裏づけている。このモンディアル3.2には、イギリス国内では売買の対象ともなり得る桁数の少ないナンバープレート「77 MJF」がつくのだが、このオークションの落札者にはそのまま権利が引き継がれることになっている。
初めてのクラシックフェラーリとして最適な理由とは!?
今回の出品にあたり、アイコニック オークショネア社では「この見事なフェラーリは非常に優れたコストパフォーマンスを誇り、フェラーリオーナーへの第一歩として最適です。最近の写真撮影の際には完璧なコンディションで快調に走り、素晴らしいエンジン音を響かせていました」と公式カタログ内で謳っている。そして、ここ数年の英国における販売実績からすれば少々高めにも映る、3万ポンド〜4万ポンドのエスティメート(推定落札価格)を設定した。
この自信ありげなエスティメートにもかかわらず、コンディションの良さが評価されたのか、バーミンガムのNECで行われた競売ではビッド(入札)が順調に進んだ。終わってみればエスティメート範囲に収まる3万4313英ポンド、現在のレートで日本円に換算すれば約730万円で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。
ところで蛇足ながら、これからクラシック フェラーリの世界に足を踏み入れたいと切望している熱心なファンには、市場ではもっともリーズナブルなフェラーリであるモンディアルのなかでも、とくに3.2以前のモデルに目を向けることをお勧めしたい理由がある。
308シリーズから360シリーズに至るフェラーリV8ユニットは、バルブ駆動をタイミングベルトで行っていた。そのため一定の頻度でベルト交換を要していたのだが、モンディアルt以降の縦置きミッドシップ車では、交換のためにエンジンをいったん降ろす必要があった。
いっぽう、3.2までの横置きV8エンジンは、車体に搭載したままベルト交換が可能だったためにメンテナンス費用が安く抑えられる。この点も、この時代のV8モデルがクラシック フェラーリの世界に足を踏み入れるのに絶好のパートナーになってくれる、大きな要因のひとつとされているのだ。
とはいえ40年近くも前に生産されたクルマ、しかも正真正銘のフェラーリである以上、当然ながら維持のための労力と費用について、然るべき覚悟を要するのは間違いないところである。
※為替レートは1英ポンド=213円(2026年5月9日時点)で換算





























































