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新車から55年間ワンオーナー! ホンダ「NⅢ 360 TOWN」をノーマル状態で維持したオーナーは「静かなるナイセスト ピープル」だった!!

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TEXT: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)  PHOTO: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:オーナーの西永さんと1971年式 NⅢ 360 TOWN。昭和46年の新車購入から55年間、ワンオーナーで乗り続けている
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:当時のまま保たれた室内。ステアリングやシフトレバーなど各部がオリジナルの状態を維持している
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:1971年の新車購入から55年間、ほぼノーマルを維持してきた希少なワンオーナー車だ
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:リアクォーターパネルに設けられたルーバー(換気口)。エアコン非装備の時代に車室内の空気を後方へ排出する役割を担っている
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:TOWNシリーズ上から2番目に位置する「スーパーデラックス」グレードのバッジ。カーラジオや熱線吸収ガラスなどを標準装備した上位仕様だ
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:リアウインドウに貼られた「JAF」のステッカーが良い味を出している
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:リアクォーターウィンドウは外側へ押し出して開く開閉式だ
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:ルーフに残るラジオアンテナ。スーパーデラックスグレード特有の装備だ
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:標準装備のフェンダーミラー。丸型のシンプルなデザインで、視認性も良い
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:スチールホイールに装着された純正のハブキャップ。「不要な脱着をしない」という方針のもと、貴重な純正部品が良好なコンディションを保っている
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:リアウインドウ内側に装着されたブルーのマジックカーテン。このクルマに装着された希少なアイテムのひとつだ
  • ホンダ NⅢ 360 TOWN:新車時から掲げ続ける「8富」の地域表記が当時の登録時期を物語る

新車から55年間ほぼノーマルをキープできた理由は「不要な脱着をしないこと」

1955年から1975年まで20年間続いた「360cc規格」は、日本の軽自動車史においては「黄金時代」と言えるほど各メーカーの創意工夫が詰まったわずか3メートル以下のコンパクトなクルマでした。それだけに普段の足として酷使されてきた360cc規格の軽自動車は、良好なコンディションを維持する個体が激減しています。金沢クラシックカーミーティングの会場で、1971年の新車購入から55年間乗り続けるホンダ「NIII 360 TOWN」のワンオーナー車輌を発見しました。ほぼノーマルをキープし続ける西永さんが語る「コンディション維持の秘訣」をお聞きしました。

新車当時の古い小さなナンバーを掲げたホンダ「N360」を発見

高度経済成長期に、庶民にも手が届く安価な大衆車として発売され、酷使されてきたケースが多い旧規格の軽自動車。一般的な普通乗用車と比べてコンディションの良い個体が圧倒的に少ないと言われており、中でも「サブロク」の愛称で知られる360ccの初代規格となる軽自動車は、令和の世になり徐々に状態の良い車両が減ってきた気がする。今回はそんなサブロク軽の代表格であるホンダのN360を会場で発見した。しかもひと回り小さな通称「サブロクナンバー」も「8富」とかなり古い時代のもののようだ。早速オーナーの西永さんを直撃してみた。

「このクルマは1971年式のホンダNIII 360 タウンです。実はこの前にもN360に乗っていて、その乗り換えで昭和46年に新車で購入しました。当然ナンバープレートは新車時のままです」

NIII 360とは、1967年3月に発売されたN360が2度のモデルチェンジを経た最終世代の呼称だ。「Nっころ」の愛称で親しまれたN360ファミリーの集大成といえる1台である。

バイク譲りの技術で高性能を誇ったNっころ

元々バイクの製造で大きくなったホンダは、Sシリーズなどの少数生産スポーツカーで四輪の世界に参入した。その後、本格的な量産乗用車としてデビューしたのがN360だ。小さくコロンとした愛らしいスタイルと、急ハンドルを切ると転がりそうになるほどの軽快な身のこなしから、いつしか「Nっころ」という愛称で親しまれるようになった。

当時のサブロク軽は2ストロークエンジンが主流だったが、ホンダはバイクで培った4ストロークエンジンの技術を活かし、後に追加されたツインキャブ仕様は36psという高出力を誇った。初期モデルは、当時ホンダの2輪では最大排気量を誇ったDOHC空冷2気筒エンジンを搭載していたCB450のエンジンをベースとした。450ccの排気量をダウンした高回転型エンジンに、常時噛み合い式のドグミッション(バイク由来のトランスミッション形式で、素早いシフトチェンジが可能な構造)を採用するなど、まるでバイクのようなエンジンと駆動系を持つクルマだった。

オーナーの西永さんが乗る NⅢ 360 TOWN は、1970年9月に追加された派生グレードだ。同年1月の NⅢ へのモデルチェンジでは、ドグミッションに代わってフルシンクロ式のトランスミッションを採用し、より一般的な乗用車らしい操作性を手に入れた。その中でも TOWN は、それまでの高回転型エンジンをあえて最高出力27psに抑えつつも、低回転から扱いやすくチューニングしたグレードだ。当時の軽自動車界はパワー競争の真っ只中にあったが、この「タウン」はあえて「パワーよりも快適さと扱いやすさ」に舵を切った、時代を先取りした一台と言える。

55年間ほぼノーマルをキープしながらコンディションを維持した秘訣

西永さんはこのTOWNを新車で購入して以来、ほとんどノーマルのままで、基本的に何も変更していないという。唯一、リアウインドウガラスの内側に装着しているブルーのプラスチック板は、スモークではなくガラスの曇り止めのためのマジックカーテンと呼ばれる当時の社外アクセサリーだ。熱線入りリアガラスが一般的でなかった時代の人気アイテムである。ちなみにスチールホイールには、今となっては貴重な純正のハブキャップが非常にきれいな状態で備わっている。

遠くのイベントにも自走で行くそうだが、その際は外して走るのだろうか?

「いや、その逆ですよ。頻繁に着けたり外したりしていると、爪の部分が広がっちゃって、外れやすくなるんです。だから車検のときとか必要なとき以外、できるだけ不要な脱着をしないのが秘訣です。長距離のイベント遠征でもこのまま走っていきますが、全く外れることはありませんよ」

NⅢ 360 TOWN の当時のキャッチコピーである「静かなるナイセストカー」は、1960年代にホンダがアメリカでスーパーカブ(現地名:Honda 50)を売り出した際のキャンペーンである「You meet the nicest people on a Honda(ホンダに乗ると素晴らしい人たちに出会える)」という流れを汲むものだ。当時の二輪車へのイメージは「アウトロー」が乗るものという見方が大きかった時代に、二輪車への「イメージの逆転」を図り大成功を収めたキャンペーンだ。当時のホンダの軽自動車は「速いけど、うるさくて疲れる」イメージを転換するため、「NⅢ 360 TOWN に乗っている人は良識があり、周囲への配慮(静か)を忘れない、知的で素敵な人(ナイセスト ピープル)です」というオーナーの品格を肯定する意味が込められていたと言われている。

新車から55年。西永さんが実践してきたのは、特別な技術でも高価なメンテナンスでもなく、「触らなくていいものには触らない」という極めてシンプルで良識あるナイセスト ピープル哲学だった。当時の軽自動車は構造そのものがシンプルだ。複雑に手を加えるより、シンプルな状態のまま日常的に小まめなメンテナンスを続けることが、長く良いコンディションを保ち、故障で止まることなく周囲への配慮も怠らない旧車ライフということなのかもしれない。

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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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