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日本で大人気のランチア「デルタ HF インテグラーレ」! 世界限定180台「ディーラーコレクション」より日本版コレツィオーネが高い!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

希少ランチア「デルタEvo.Ⅱ」の欧州180台限定ファイナルモデルがオークションに登場

ここ最近では、1980〜90年代生まれの「ヤングタイマー」と呼ばれる世代のクルマたちが、世界的なオークションで主役級の注目を集めている。2026年4月にモナコで開催されたオークションでは、ランチア「デルタHFインテグラーレ」の欧州向け最終限定車「ディーラーコレクション」が出品され注目を集めた。今回はこの希少な1台について、モデルの生い立ちから約1735万円で落札されるまでの経緯の詳細を追った。

WRC6連覇の偉業を経て誕生した究極の最終コレクターズアイテム

ワークス・ラリーチームの競争力を維持するため、新たなFIA(国際自動車連盟)のホモロゲーション(車両公認)を受けるべくアップデートされたのが、ランチア「デルタHFインテグラーレ」の最初のエヴォルツィオーネ(進化版)である。通称「エヴォルツィオーネI」と呼ばれるこのモデルは、グループA公認(生産車5000台以上)のため1991年末ごろから生産された。

開発を主導した旧アバルト社内での愛称から「デルトーネ」とも呼ばれるこのモデル。フロントおよびリアのトレッド(左右のタイヤ間の距離)が拡大され、それに合わせてボディワークも変更された。さらに、210psを発生するよう再チューニングされたエンジンなど、数多くの細かな改良が加えられている。

1992年シーズンの「世界ラリー選手権(WRC)」にて、前人未到のマニュファクチャラーズタイトル6連覇を達成したのち、グループAホモロゲーションモデルとしての役割を終えたデルタHFインテグラーレ。しかし翌1993年には、最終型の「エヴォルツィオーネII」へとさらなる進化を遂げる。

燃料噴射システムがシーケンシャル化され、排気系には世界共通で触媒コンバーターが追加された。そのうえで、エヴォルツィオーネIから5psアップとなる215psをマークしている。くわえて、アロイホイールもエヴォルツィオーネIと同じ基本デザインを踏襲しながら、15インチから16インチへと大径化され、アピアランス上の迫力をさらに増していた。

このエヴォルツィオーネII時代には、1993年の「マルティーニ6」を皮切りに、「ブルー・ラゴス」や「ジアッラ」など複数の限定バージョンが設定された。それぞれ現在の国際クラシックカー市場にて、非常に高い評価を受けているのはご存知のとおりだ。その限定車の集大成として、もっとも希少なコレクターズアイテムとして知られる「ディーラーコレクション」が、EU市場に向けて1994年にデビューする。

その名が示すように、このモデルはヨーロッパのランチア正規ディーラーのみに提供された。エヴォルツィオーネIIをベースとし、専用カラーである「パールレッド(126/F)」で塗装されている。インテリアには、明るいタン色のレカロ製スポーツシートやアルミ製の計器パネル、プッシュボタン式イグニッション、そしてブラックのカーペットが装備されていた。

生産台数はわずか欧州のみの180台にとどまる。現在ではこの「最後の傑作」とも称されるモデルは、コレクターの間で非常に高い人気を博しているのだ。

スイスに新車で納車され、2人のオーナーに大切に乗り継がれた極上個体

先ごろ、ボナムズ社の「MONACO 2026」セールに出品されたランチア デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネIIは、リミテッドエディションである「ディーラーコレクション」として限定生産された180台のうちの1台だ。シリアルナンバーは「065」。スイスのサンモリッツに新車として納車され、1995年に同地で初登録されたことが判明している。

初代オーナーはレナート・ツシャルナーなる人物だ。そして今回のオークション出品者である現オーナーは、1997年3月にロンドンの販売店「ヘンドン・ウェイ・モーターズ」から購入している。この時点での走行距離は2万5497kmであり、新車時代からの歴代所有者は2名のみであったと推測されている。

それから29年後、ボナムズ・オークション社の公式カタログ作成時点で、オドメーターが示していた走行距離は5万8535kmだった。現在ではフランス国内で登録されているため、フランスの登録証明書を保持している。

また2025年5月には、ドイツ・ベルリンの「アトリエ・オートモービル」社にて、1万ユーロ以上の費用を投じて主要な整備作業が実施された。その作業項目には、デルタHF系のランプレーディ・ユニット(エンジン)では定期的な交換が必須とされる、タイミングベルトのリニューアルも含まれていた。

この時の大規模整備に関連するインボイス(請求書)類は、車両とともに大切に保管されている。ほかにも整備記録簿やオーナーズマニュアルなども付属しており、素性の良さがうかがえる個体だ。

約1735万円の落札価格は限定車の中ではリーズナブルなワケとは!?

ボナムズ・オークション社は、この限定版「ディーラーコレクション」について、ここ数年の限定版エヴォルツィオーネIIの販売実績からすると控えめにも映る、10万ユーロ〜14万ユーロ(日本円換算で約1840万円〜約2576万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

ところが迎えたオークション当日。オテル・フェアモントで行われた競売では、想定されたエスティメートの最安値をさらに下回る9万4300ユーロで落札された。2026年6月8日現在の為替レートで日本円に換算すれば、約1735万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

ちなみに、数ある限定版エヴォルツィオーネIIのなかでも、現在の市場評価がもっとも高い傾向にあるのが日本仕様だ。もともとは日本向けのファイナルモデルとして250台が限定生産された「コレツィオーネ(欧州では「エディツィオーネ・フィナーレ」と呼ばれる)」であることは、これまでAMWのオークションレビューでもお伝えしてきたとおりである。

主に日本から欧州へと戻された「コレツィオーネ」では、3000万円前後の値づけが珍しくなくなっている。それに対し、今回の「ディーラーコレクション」が2000万円以下で流通している実情をみると、たとえ同じファイナル限定車であっても、それぞれの人気には確かな差が出てしまうことを実感せざるを得ないのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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