空冷ポルシェ911への情熱が生む、壮大なレストアプロジェクト
2026年5月16日~17日に愛知県のAichi Sky Expoで開催された「第2回オートメッセ in 愛知2026」。数々のカスタムカーやチューニングカーが会場に展示される中でも、ひと際熱い視線を集めていたのが、老舗ケミカルメーカー「AZ(エーゼット)」とのコラボブースに置かれた1台の空冷ポルシェだった。手がけたのは自動車系YouTuber、「まーさんガレージ」の“まーさん“だ。10年以上も雨ざらしだったという驚きの朽ちた状態から、外装の完成、そして今後の本格的なカスタマイズへと向かう、壮大なレストアプロジェクトを紹介したい。
10~20年の雨ざらし、エンジンもミッションもないゼロからの出発
ポルシェ雑誌のライター歴30年という、空冷ポルシェを知り尽くした“まーさん”。その彼がこのプロジェクトを始めるきっかけとなったのは、長年の付き合いで取材先でもある専門店、フラットシックスガレージの社長からの話だった。
「もとは社長がご自身で修理して乗るために、ずっと置いていたクルマだったんです。けれど社長も、もう歳だからこのクルマをあなたに譲るからやりなさい、ということになったのです。僕ももう一度、“空冷ポルシェに乗りたい!”と思っていたので、こういうことになったのです」。
しかし譲り受けた当時の状況は、普通のクルマ好きならば絶対に手を出さない状況。補修用の細かなパーツを色々ともらったりしたが、およそ10年以上もの間、完全に雨ざらしの状態。しかもただボロボロだっただけでなく、エンジンもトランスミッションも一切載っていない空っぽだった。中古のエンジンとミッションを探し出して用意したものの、まさに『ゼロからの創造』とも言えるレストアである。
憧れの“ナナサンカレラ”仕様に大変身!
落ち着いたライトイエローに塗られたボディに、リアには伝統のダックテール。一見すると、ポルシェファン憧れの1973年式「911カレラRS(通称ナナサンカレラ)」そのものに見えるこの車両だが、実はそのベースは1982年式のポルシェ911、通称、ビッグバンパーと呼ばれる930型だ。当時、ビッグバンパーをナナサンカレラルックに見せるスタイルが流行っていて、“まーさん“も憧れのそのスタイルにカスタマイズ。スタイリッシュな外装を完成させている。
会場に展示されたその姿を見た来場者は、完璧なナナサンルックに感動していたのだが……“まーさん”によれば「現状は外回りがようやく出来たところ。内装をもう少し手を加えたらようやく車検が通るかな、という段階」という。つまり、この華やかな展示の瞬間も、まだ長い旅路の途中に過ぎないのだ。

見逃せない今後の展開、「ポルシェ独自の流用チューン」
“まーさん”が描く今後のプランは、単なる“走れる状態に戻す”というレストアには留まらない。そこには、ポルシェ専門ライターとしての深い知見と、メカニズムへの探究心が凝縮された、独自のコンセプトが存在する。
「とりあえずエンジンとミッションを載せて走るようにし、車検を通して、パワーチェックをかけます。その後でエンジンをバラバラにして、少しチューニングしようと考えています」。
搭載されるパワーユニットは、930型オリジナルの3リッター空冷水平対向6気筒エンジン。“まーさん”が語るポルシェ製エンジンの面白さは、高価な社外パーツを使わなくても、純正部品の流用でチューニングができる点にあるそう。
「ポルシェのエンジンって、2リッターから始まって最終的に4リッターまで拡大されていく中で、すごく共通部品が多いんですよ。例えばこの1982年のエンジンに、1990年代のエンジンのカムシャフトがそのまま入るんです。カムのプロフィールが違うので、それだけでちょっとしたチューニングになるんですよ。そして現代ではあまり見られない当時の機械式燃料噴射の機構(Kジェトロ)をベースにしながら、こうしたポルシェならではのノウハウやエンジンの面白さを、伝えられたらなと思っています」。
ここまでハマった、空冷911に宿る「レスポンスの魔力」
これまで国産スポーツカーやメルセデス・ベンツ、BMWなど、数多くの名車に乗ってきた“まーさん”。しかしそのほとんどを1年ほどで手放してきたという。そんな彼が「唯一、全く飽きずに8年間も乗り続けた」と絶賛するのが、かつて所有していた1983年式の911だった。今回再生している1982年式は、まさにその思い出の名車と全く同じ仕様なのだ。この時代の空冷911には、ほかでは替えがきかない絶対的な魅力があると熱弁する。
「911の魅力って、一般道を普通に走るだけでも下のトルクがあってとにかく楽しいんですよ。高回転域まで回さなくてもOK。それに何より、アクセルを踏んだ瞬間のエンジンのレスポンス、いわゆる『ツキ』が素晴らしいんです。僕の感覚だと、国産スポーツカーはアクセルを踏んでから『……グンッ』と来る。でも古い空冷911だと、踏んだ瞬間に『ビュン!』と来る。公道を普通の速度域で走っていて、これほど気持ちいいクルマはありません」

ケミカルメーカー「AZ」のアンバサダーに就任!
今回のオートメッセ in 愛知における「AZ」とのコラボレーションも、大きなトピック。AZは、クルマ好きの間では洗車用品や高機能ケミカルでおなじみだが、実は創業80年を超える老舗のオイルメーカーでもある。クルマ業界での知名度をさらに広げるため、“まーさん”がアンバサダーとなってサポートしているのだ。さらに同社が展開するポルシェ専用のオイルについて“まーさん”は、「非常に高いクオリティで作られていて、入れるとエンジンの回り方が本当に滑らかになりますよ」と太鼓判を押すのも注目ポイント。
あの動画で見ていた空冷ポルシェ911が、今こうしてファンの目の前でナナサンカレラ仕様となって展示されている。車検取得後には、前代未聞の流用チューニングへと突き進む「まーさんガレージ」のポルシェ再生ドラマは、新たなポルシェの楽しみ方を教えてくれているのだ。完成時には「ビュン!」と快音を響かせて駆けることを、多くのファンが心待ちにしている。






































