世界的JDMブームの中でランエボⅣ安値の背景に「10万km超とナローボディ」影響か?
ヨーロッパで開催される国際オークションには、WRC(世界ラリー選手権)で活躍したベース車両も数多く出品される。英国で行われたオークションにも、グループAカテゴリーで争ったWRC時代を彩った三菱「ランサーエボリューションIV」が登場した。世界的なJDMブームで価格高騰が続くなか、このヤングタイマーが刻んだ意外な落札結果のドラマをお届けしたい。
日本車が世界を圧倒した黄金期! WRC人気を牽引した三菱の強固なグループA戦略
ラリージャパンが5年連続で開催され、日本国内でも人気復活の兆しを見せるWRC。そのWRCが50年以上におよぶ歴史のなかで、1990年代は日本車の黄金期と呼ばれ、モータースポーツファンだけでなく多くのクルマ好きを熱狂させた。
その理由のひとつは、トヨタ、マツダ、日産、スバル、 三菱といった日本メーカーが奮って参戦したことが起因している。そしてもうひとつは、ラリーの本場であるヨーロッパ勢を相手に日本車が世界の頂点を争い、ときには王座に君臨したことである。しかも特定メーカーによる独走ではなく、各メーカーがしのぎを削りながらタイトルを奪い合ったことで、ファンは応援するメーカーの勝敗に一喜一憂した。競技車両を模したレプリカマシンの製作も盛んに行われ、アフターマーケットを活性化させたのは、今となっては懐かしい時代の光景だ。
なかでも三菱とスバルは、ラリーで勝つための最新テクノロジーを投入したエボリューションモデル(年次改良車)を毎年のように投入し、互いに競い合いながら国内のWRC人気を牽引した立役者だった。
とくに三菱は、1997年にレギュレーションが改造範囲の広いWRカー(ワールドラリーカー)に移行したあとも、市販車へのフィードバックを重視し、改造範囲の狭いGr.A仕様で挑戦を継続。ドライバーズ、メーカーズの両タイトルを獲得するなど、市販車ベースのポテンシャルの高さを世界に誇示したのである。
四輪駆動制御の礎となった名車! 先進電子デバイス「AYC」を初搭載したエボIV
2026年3月20日〜21日に英国・バーミンガムで開催されたアイコニック・オークショネアーズの手がけるオークション、およびトレードショー「The Classic Car and Restoration Show 2026」に出品されたのは、1996年式のランサーエボリューションIV。ベースとなるランサーのモデルチェンジに伴いボディを刷新した、第2世代のファーストモデルである。

基本コンポーネンツは第1世代のエボI〜IIIを引き継ぐが、エンジンの搭載位置を左右反転することで駆動ロスを低減。さらにツインスクロールターボの採用でレスポンスを向上させた。
サスペンションはリアをマルチリンク化することで路面追従性を高め、後輪左右の駆動配分を最適に制御するAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を初搭載した。電子の力で曲がる4WDを目指したこの技術は、現在の三菱の走りを支える四輪電子制御のAWC(オールホイールコントロール)の礎となったのだ。
グレードは、快適装備を装着した「GSR」と、国内ラリーを見据えてAYCを省略するなど装備を簡素化した「RS」の2種類を設定。エボシリーズとして初のモデルチェンジであったことに加え、最新の電子デバイスを組み込んだ先進性、そして当時の自主規制いっぱいの280ps(トルクは36.0kg-m)に達したパフォーマンスも大きな話題となった。
エボリューションのサブネームにふさわしい進化を遂げたエボIVは、のちにAT仕様の「GT-A」を設定したエボVIIに続くセールスを記録し、現在でも最後の5ナンバーサイズのエボとして一定の人気を誇っている。ちなみにWRCには1997年から1998年の第4戦までの18戦に投入されて6勝を獲得。両シーズンでトミ・マキネンがドライバーズチャンピオンに輝くなど、その戦闘力の高さを見せつけた。
10万km超の走行距離と5ナンバーナローボディが落札価格に与えた影響
ここからが本題だ。今回出品されたエボIVだが、2007年1月に英国で登録され、車両登録書であるV5には2名のオーナー履歴が記載されている。
ボディカラーは人気の高いスコーティアホワイト。WRCマシンの定番ホイールであるOZ Racing製スーパーツーリズモを装着する以外は、オリジナルの佇まいを保っている。オドメーターは6万5246マイル(10万5003km)。エンジンは正常に始動し自走可能な状態だが、2021年4月で車検が切れており、公道復帰させるためには一定の整備が必要だと考えられる。とはいえ、ガレージで長期保管されていたこともあり、エクステリア、インテリアのコンディションは良好。年式を考えれば十分に魅力的な個体といえよう。
北米市場における通称「25年ルール」も解禁され、世界的に人気の高まりを見せているランエボだが、エボIVはワイドボディのエボV、エボVIに比べると5ナンバーサイズのナローなボディのままとなっており、市場評価がやや控えめな傾向にある。さらにこの個体は走行距離が10万kmを超えていることもあって、エスティメート(予想落札価格)も1万ポンド〜1万5000ポンド(邦貨換算約215万円〜約322万円)に設定されていた。

そして迎えた当日のオークション。競りは予想レンジ内で推移し、最終的には1万668ポンド(邦貨換算約229万円)でハンマーが鳴らされることとなった。
世界的なJDMバブルのなかでも、派手な外観のワイドボディモデルに人気が集中する海外市場において、すっきりとしたオリジナルのスタイリングを保つエボIVは、過熱するマネーゲームの対象から一歩外れた位置にあるのかもしれない。
しかし、この「229万円」という落札価格は、投機目的のコレクターではなく、純粋に1990年代のラリー黄金期の走りを愛するファンにとっては絶好のチャンスと言えるプライスだ。バブル的な高騰に踊らされることなく、再び元気にハンドルを握り、泥臭く走らせてくれるオーナーのもとへ渡ったのだとすれば、それこそがこの名車にとって、もっとも幸福な結末ではないだろうか。当時最新の4WD電子デバイスで武装されながらも、すっきりとしたボディラインを持つこの世代のランエボこそ「ランエボの真骨頂」のような気もするのだが皆さんのご意見はいかがだろうか。
※為替レートは1ポンド=215円(2026年6月13日時点)で換算
































