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一般道でもアクセル全開!スズキ「フロンテクーペ GX」で痛快な走りを楽しむオーナー

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TEXT: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)  PHOTO: 勝村大輔(KATSUMURA Daisuke)

1971年式のスズキ「フロンテクーペ GX」は、異端のスポーツクーペ! 一般道でアクセル全開を楽しめる稀有な1台だ

軽自動車に2シーターのスポーツクーペが存在したことを、いまの若い世代は知らないかもしれない。1971年式のスズキ「フロンテクーペ GX」は、全長3m足らずの枠内で居住性より走りを選んだ尖ったモデルだ。後継のセルボから乗り換えたオーナーの藤井さんに、その尽きせぬ魅力を取材した。

サブロク軽になぜ2シーターのスポーツクーペが生まれたのか

居住性を犠牲にしてまでスタイルを優先した軽自動車が、高度経済成長期の日本に実在した。それがスズキのフロンテクーペである。全長3m×全幅1.3mという限られた枠で生産されるサブロク軽は、本来であれば枠いっぱいの室内空間を確保し、快適性や居住性を高めることが定石だ。ところが当時、その定石を無視して人気を集めたモデルがあった。軽自動車ながら2人乗りのスポーツクーペという異端の1台であり、サブロクミートの会場でもひときわルーフが低い。近年でこそホンダ「ビート」やスズキ「カプチーノ」が知られているが、そんなコンセプトを1971年に実現したのだから驚くほかない。ちなみに、軽自動車のパワー競争は1967年にホンダがN360を発売したことで本格化した。2ストロークエンジンにキャブレターを複数装着し、高回転まで回す車両が市販されるなど、各社がスポーティなモデルを次々と投入していった時代である。

ジウジアーロが原案を描いたサブロク軽のコンパクトクーペとは

フロンテクーペは1970年に登場した3代目フロンテをベースとする派生車種である。2シーターのクーペモデルとして1971年9月にデビューした。当時の軽自動車では当たり前だった三角窓を廃し、フロントガラスも大きく傾斜させている。3連キャブレターを装着した水冷2ストローク3気筒のLC10W型エンジンは37psを発生し、俊足を誇った。デザインはイタリアのジョルジェット・ジウジアーロが原案を担当し、これをスズキ社内のスタッフがさらにスポーティに仕上げたといわれている。

当時の常識と比べても過激なスタイリングであったことがわかるはずだ。オーナーの藤井さんに、貴重なフロンテクーペを見せてもらった。藤井さんは”生粋のクーペ好き”で、後継モデルのセルボから乗り換えている。「このクルマは1971年式のフロンテクーペで、最上級グレードのGXになります。今から3年ほど前に入手しました。これまでライフやミゼットなどいろいろな車両に乗ってきて、この前にはセルボに乗っていました」と語る。ちなみに、フロンテクーペが1976年に生産を終了したのち、軽自動車規格の改正に合わせてボディを拡幅し、エンジンも排気量を拡大した後継モデルがセルボだ。

一般道でアクセル全開を楽しめるのがフロンテクーペ最大の魅力

藤井さんのフロンテクーペは、基本ボディこそオリジナルを保ちながら走りに振った仕様である。当時のレース用サスペンションを入手し、車高を5cmほどダウン。さらにスピードスターのJILBA R10アルミホイールを装着し、若干はみ出すタイヤをカバーすべくフェンダーにゴム製のリップを流用している。マフラーはワンオフで製作したチャンバーで、サイレンサーがリアエプロンから覗く。冷却系もバイク用のラジエターを流用して強化し、夏場でも快適なクルージングが楽しめるようになったという。

「スズキ車は意外と部品の流用が効くので、なんとか維持しています。機構も簡単なので、自分でメンテナンスを楽しんでいます。フロンテクーペは当時としてはかなり斬新なモデルだったと思います。何よりスポーツクーペなのに、一般道でアクセル全開を楽しむことができるのが最大の魅力ですかね」と藤井さんは笑う。

居住性をあえて手放し、走る歓びだけを純粋に追い求めた1台。それを半世紀後の現在も自らの手で維持し、一般道で全開にしてみせる藤井さんの姿勢は、フロンテクーペが背負ってきた尖った思想そのものである。小さなボディに詰め込まれた濃密な走りは、いまもオーナーの日常を鮮やかに彩り続けている。

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