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1980年式3.0SCをベースに伝説の「911RSR」を忠実に再現! 製作コストとパーツ代を考えれば1691万円は超破格?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Iconicauctioneers  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

本格的なメカニズムを凝縮! 鮮烈なイエローグリーンの空冷911

イギリスで開催されたオークションに、往年のレーシングスピリットを宿したポルシェ「911」をモディファイしたクルマが出品された。1980年式のポルシェ「911SC」をベースに、傑作レーシングカーであるポルシェ「911カレラRSR」の姿を本格的に再現した1台だ。Tech 9 Motorsport社(英国リバプールにあるポルシェ専門独立系ショップ)が手がけた3.8リッターの空冷水平対向6気筒エンジンを搭載する注目のオークションモデルは、目の肥えたコレクターたちからどのような評価を受け、いくらで落札されたのかを調査した。

1980年式の3リッター版「911SC」をベースに名高い競技用マシンのスタイリングを再現する

古今東西、スポーツカーと称されるクルマは数多い。そのなかでも空冷時代の911ほど、チューニングのベース車両として世界中で多用されたモデルは存在しないだろう。それぞれのモディファイの完成度が、現在の国際的なクラシックカーマーケットにおける市場評価へダイレクトに直結する傾向がある。

英国ノーザンプトン近郊のシーウェル飛行場を舞台に開催されたスーパーカーのイベント「スーパーカーフェスト・ランウェイ2026」。この華やかなイベントに併催されたオフィシャルオークション、英アイコニック・オークショネア(Iconic Auctioneers)社の「The Iconic Sale at Supercar Fest 2026」で、1台の特別な 911 が出品された。それが、1970年代から1980年代のレーシングスピリットを現代のエンジニアリングで蘇らせた 911カレラRSR のオマージュモデルである。

ベースとなった車両は、1980年10月にオランダで新車登録された左ハンドル仕様の3リッター版911SCだ。ロードカーとしての扱いやすさを持つこのモデルから、競技用マシンの傑作である911カレラRSRへとコンバージョンするプロジェクトは、2011年にオランダでスタートした。その緻密な製作過程を記録した膨大な写真資料や関連する請求書は、すべて車両ファイルに大切に保管されている。完成直後の2012年にはオランダ国内のポルシェ専門誌で大々的に特集が組まれるなど、当時から愛好家コミュニティの間で高い注目を集めていた個体である。

964系のフラット6を3.8Lへ排気量アップして最高出力330馬力を絞り出す

2017年11月に英国在住の熱心なポルシェエンスージアストがこの個体を取得して以降、マシンのポテンシャルはさらに引き上げられることになった。ポルシェ専門の著名なチューニングファクトリーである「Tech 9 Motorsport」社などによる多額の追加投資とモディファイが施されたことで、当初のチューニング構想が完璧な形で完成へと導かれたのだ。

そのハイライトと言えるのが、リアのエンジンフード内に収められた心臓部である。ベースの3リッターエンジンに代わり、ポルシェ「964」型911に由来する空冷水平対向6気筒エンジンをスワップした。さらにTech 9 Motorsport社の手によって、排気量を本来の3.6リッターから3.8リッターまでスケールアップする高度なチューニングが施された。この結果、自然吸気のフラット6としては驚異的な最高出力330馬力を発揮するモンスターユニットへと進化を遂げている。

これほどのハイパワーを獲得する一方で、徹底した軽量化プログラムにより、最終的な車両重量はわずか1035kgに抑えられた。卓越したパワーウェイトレシオを実現しており、テストドライブを行った関係者からも、その加速パフォーマンスは爽快そのものであると極めて高い評価を得ている。

1035kgまで軽量化されたボディにポルシェ917由来のブレーキシステムを組み込む

この圧倒的なパフォーマンスを安全かつ確実にコントロールするため、シャシーや足まわりにも一級品のコンポーネントが惜しみなく投入されている。サスペンションには「ビルシュタイン」社製のRSR仕様コイルオーバースプリングを採用し、路面を正確に捉える卓越したハンドリング特性を確保した。さらにストッピングパワーの要となるブレーキシステムには、伝説のレーシングカーであるポルシェ「917」に由来する強力なシステムを移植しており、サーキット走行における高い信頼性を保証している。

エクステリアは、1974年の北米「インターナショナル・レース・オブ・チャンピオンズ(IROC)」選手権に参戦した 911カレラRSR レースカーに採用されていた15色のひとつ、鮮烈な「ゲルブ・グリューン(イエローグリーン)」のモノトーンで美しく塗装された。ボディワークはオリジナルRSRのスタイリングを忠実に再現しており、軽量なグラスファイバー製フェンダーに加え、ルーフ、ボンネット、リアウィングには贅沢なカーボンファイバー素材が奢られている。

足元を飾るのは、正統派の「クロスウェイト&ガーディナー(英国サセックスにあるCrosthwaite & Gardinerが、当時の製法と最新技術を駆使して完全に復刻した、ポルシェ911カレラRSR用の超軽量・超高剛性なマグネシウム製レーシングホイール)」社製RSRホイール(ホイール4本だけでも数百万円単位と言われている)だ。インテリアもレース仕様に徹底してこだわっており、フルロールケージや競技用ハーネス、当時の仕様を忠実に再現した「ロリポップ」スタイルのバケットシート、ダッシュボードのキルスイッチ、およびFIA(国際自動車連盟)公認スペックの消火システムを完備する。まさに公道とサーキットを高次元でクロスオーバーできる汎用性を備えている。

製作コストを考慮すれば破格ともいえる約1691万円のハンマープライスで落札される

アイコニック・オークショネア社が事前に設定したエスティメート(推定落札価格)は、8万ポンド〜10万ポンド(邦貨換算約1720万円〜2150万円)であった。これほどのチューニング内容やTech 9社による信頼性の高いビルドクオリティを考慮すれば、非常にリーズナブルな価格設定と言えた。

2026年5月16日にシーウェル飛行場の特設会場で開催された実際の競売では、エスティメートの下限にわずかに届かない7万8667ポンドでハンマーが振り降ろされた。これは日本円に換算すると、約1691万円という価格である。

現代において、1980年式の911SCをベース車両として用意し、964型のエンジンを調達して3.8リッターへのスケールアップを施し、多くのカーボンパーツの採用、復刻版のマグネシウム製RSRホイール、917由来のブレーキシステム構築などをゼロから行えば、今回の落札額を遥かに超える莫大なコストと長い歳月が必要となることは明白だ。それを考慮すれば、この完璧なコンディションを維持した911RSRオマージュは、コストパフォーマンスの面で極めて優れた価値を持っていると言える。

アナログでダイレクトなドライビング体験を何よりも愛する空冷911エンスージアストにとって、この約1691万円という落札価格でRSRオマージュ車両が手に入ったことを考えれば、バーゲンプライスとも言えるお買い得感高い買い物であったに違いない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

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