妻の条件は「4ドアで50万円以下」。娘の引っ越しもこなす1970年式「バモス ホンダ」で突破した旧車ライフへの裏ワザ
2023年の初開催以来、地域活性化のイベントとして盛り上がりを見せている「葛西クラシック&スポーツカー フェスティバル」に潜入した。会場となる葛西神社の境内には、クラシックカーから新しい世代のスポーツカーまで幅広い車種が集結していた。そんな展示車両のなか、参道入口でひときわ異彩を放っていたのが、1970年式の「バモス ホンダ」だ。今ではあまり見ることのなくなった珍しいクルマのオーナーに、25年間にわたる旧車ライフの本気度と、購入時の驚きの裏ワザを明かしてもらった。
神社の境内に展示される名車たちとイベントを満喫するオーナー
「実は昨日も別のイベントに行っていまして、この週末は2日連続でイベントを楽しんでいます」
と語るのは、オーナーの戸枝 靖博さんで、日焼けした顔をほころばせていた。イベントシーズンということもあり、来週は長野県でのイベント、翌日は上田市のショッピングセンターでの催しへとエントリーしているそうだ。
「この時期は大忙しであちこちに顔を出しています」
この日持ち込んでいたのは、1970年式という初代のバモス ホンダである。長年に渡り、日本旧軽車会というクラブでのイベントを中心に楽しんでいるそうだが、「たまには他のイベントにも出ようかな」とネット検索したところ、この「葛西クラシック&スポーツカー フェスティバル」の募集を見つけて応募したという。

「今日の境内という神聖な場所での展示というのもとても新鮮ですし、50台くらいの展示規模ということで、1台1台じっくり時間をかけて見ることができるのも嬉しいですね」
これまでは大規模なイベント参加が多かったこともあり、全車を見て回ることができず、後からSNSなどで「こんなクルマも来てたのか!」と悔しがることも少なくなかったと笑顔で教えてくれた。
妻からの「4ドアで50万円以下」というファミリーカーの厳しい条件をクリアしたい…
どのイベントでも子どもたちから大人気となるバモスだが、戸枝さんとこのクルマとの出会いは30代前半の頃に遡る。独身時代はずっとクルマが好きで、角目4灯の日産「シルビア」や、ロールケージを組んだトヨタ「ハイラックス」に乗るなど、現在とは違ったハードなカーライフを楽しんでいた。
その後、結婚生活が始まり、一旦クルマの趣味はリセットしたそうだが、やはりクルマに乗りたいという思いは捨てきれず、奥さんに相談を持ちかけた。すると「4ドアで50万円以下だったら良いわよ」という現実的な条件が提示されたのである。それからは毎週金曜日の発売日になるたびに、中古車情報誌で条件に合うクルマを探す日々が始まった。
そんなある日、条件を満たした1台が目に留まった。それが「バモス ホンダ」であった。「50万円以下でバモスが買えるんだ!」

実はそれまで、特撮テレビ番組『ウルトラマンタロウ』の劇中車(ラビットパンダ)くらいのイメージしかなく、2人乗りだと思い込んでいたのだが、情報誌にはしっかりと「4人乗り」と書いてあった。予算内でオープンカーに乗れるのも魅力だし、何より4ドア(実際のところバモスにあるのはドアではなく、パイプ製の転落防止バーのみである)ということで、妻の出した条件もクリアできると考えたのだ。驚くべきトンチの効いた裏ワザである。
ライバルに奪われる前に手付金を支払い、即決で購入する行動力
翌日、販売している中古車店に電話をしたところ「まだありますよ」との返事をもらった。しかし、同じように興味を持って連絡をしてきた別の客がいると言われ、ライバルに奪われると焦った戸枝さんはすかさず質問した。
「どうしたら私のものになるんですか!」
電話口で食い下がった。
「いくらでも良いので手付金を入れてくれたら、優先権がありますよ」
と言われたため、当時住んでいた浦和から慌ててバイクを飛ばして川崎の店舗まで現車を見に行き、その場で手付金を払って一安心した。
いくら条件内とはいえ、バモスをファミリーカーと言い張るのは少しこじつけ的でもある。道中で使い捨てカメラ「写ルンです」を購入してバモスを撮影し、即日仕上げで現像した写真を夕方に帰宅した奥さんに見せたところ、心配をよそに快諾してくれたそうだ。こうして晴れてバモスは戸枝家の愛車となったのである。
「当時は通勤に電車を使っていたので、乗るのは週末だけでした。妻と2人でドライブに出かけたり、一緒にスーパーへ買い物に行ったりと、ごく普通に足車として使っていました」

その後、第一子が誕生して家族構成が変わったことで本格的なファミリーカーを購入したが、バモスは手放さず趣味のクルマとして維持し続けた。家族みんなから「バモちゃん」と呼ばれ、戸枝家のマスコットカーとしての地位を確固たるものにしている。約25年の歳月が流れ、先日結婚された娘さんの引越し作業では、ラゲッジスペースに大荷物を積載して大活躍したそうだ。
「子どもたちの成長とともに、我が家にずっといたバモスですが、子どもたちの新生活も見送ってくれました。これからも末長く付き合っていく、我が家の愛すべきバモちゃんです」と戸枝さんは語る。夫婦の約束から始まった旧車ライフは、これからも家族の笑顔を乗せて走り続ける。






































